精神分離の研究に没頭しているジキル博士は、人間の心を善と悪のふたつに分ける薬を開発する。
この薬を服用して凶悪な獣人ハイドと化した彼は、美しい婚約者がいるのに夜の女を買い暴虐の限りを尽くす。
免疫のために元のジキル博士に戻れなくなったハイドの結末は…。
ロバート・ルイス・スティーブンソンのミステリー・ホラー小説『ジキル博士とハイド氏』を映画化した作品。
主演はドリュー・バリモアの祖父にあたるジョン・バリモア氏。
ジョン・バリモアは気品もあるし、ハイドに変わるときの演技も面白かった。
当時(1920年)の特殊メイクの技術で、どーみても同じ人物とは思えない変貌ぶり。
人間には善と悪の側面があってっていうなんともさすが古典的なテーマですが、人間は常にこういう問題意識を持って生きてきたんだなと改めて。
ジキル博士がハイドに変身するシーンはなんともオーバーでズッコケ気味ですが、悪魔の化身のハイドさんは想像以上に気持ち悪い出来で、役者ってスゲーなぁと感心した。
普通なら善と悪を一つの人格で飼いならすのでしょうが、極端に善良なジキル博士は、悪になれば極端に悪くなり、自分とは全く別の人格にその役を任せなければ、ジキル博士としての自分が内にも外にも保てなくなる。
探究心旺盛なジキル博士は、自分の一つの魂を2人の人間に善と悪という形で分けて存在させるのはすばらしいじゃないの、ってコトで薬を作ってハイドに変身する。
変態ハイドさんが出てきた辺りからグイグイきます。
刺激が強い最近の映画、テレビ、その他諸々になれすぎて、モノクロの無声映画の質素さに最初は戸惑いますが、狂ったハイドさんとそのテーマ性は、そんな中で強烈な刺激になって効いてくる。
善と悪っていう単純な二項対立ではあるけど、誰にでも必ずあるこの二面性。
おもしろいです。
ただし無声映画で、ずっとアコーディオン(?)みたいな音楽が流れてるだけだから、夜中に観たら眠くなっちゃうかも。