スローモーション男

ギャンブラーのスローモーション男のレビュー・感想・評価

ギャンブラー(1971年製作の映画)
4.5
 久しぶりにロバート・アルトマン作品鑑賞

前作『MASHマッシュ』が批評的に興行的に成功し製作した西部劇。
『俺たちに明日はない』のウォーレン・ベイティ主演作。
カナダの国境ちかくの寂れた炭鉱町。そこに流れてきた賭博師のマッケーブと娼館を営もうとするミセス・ミラーの物語を軸にした異色西部劇。

まず映画の空気がとてつもないほど重く冷たい。広大なセットで撮影し、本当に西部時代で撮ったようです。出てくるキャラクターもジトジトギトギトしてて如何にも人間臭い。

ロバート・アルトマン特有の反ハリウッド的映画の構成がよく出ている。原作ではマッケーブとミラーが愛し合いながら営業をし、大きな鉄道会社に買収されないように一生懸命活躍する物語なのですが改編してます。
マッケーブとミラーは仕事のやり方が合わず喧嘩ばかり。
酷いですね…。

そしてほとんど展開が盛り上がらず、淡々と物語が進んでいく。
そして突然クライマックスで銃撃戦がありますが、まったくカタルシスはない。しかも、えーー!っていうラストです。

寂れた土地で物を売る小売りの人々、それを搾取しようとする大手の企業。この縮図は近代化していく当時の世界を表している。
またその背景にも1970年代にショッピングモールなどが続々と出来て小売業者が大ダメージを受けたアメリカそのものを風刺してる。

西部劇を使ってアメリカを批判するアルトマンの思想が素晴らしい!
ただ、その異色すぎる内容からアメリカでも日本でも大コケしたらしいです…。
現在ではアルトマンの代表作のひとつとして評価されてるので良かったです!