スローモーション男

サーカスのスローモーション男のレビュー・感想・評価

サーカス(1928年製作の映画)
4.8
 U-NEXTにチャップリンの映画がたくさん配信されたので観たことのない作品を。

 大傑作だった。
 放浪者がサーカスでどたばたを繰り返しながら、女性に恋する物語。

 まず一番最初の警察とスリと遊園地で逃げ回るシーンが爆笑でした。『上海から来た女』、『燃えよドラゴン』の前にミラーハウスのシーンを撮っている!
 それとカラクリ人形に化けて警察の目を誤魔化すのも面白いです。

 それからチャップリンのアクションスタントが凄いです。綱渡りしたりとアクロバットなことをしてしまう。

 そして何より、この作品は切ない恋の物語なんです。サーカスの団長から虐待されていた空中ブランコの女性に恋をして彼女を助けるのですが、綱渡りのレックスと女性が恋すると意地悪する。爆笑問題の太田さんが言ってましたが、チャップリンの笑いは時として残酷なんです。チャップリンはレックスが綱渡りで失敗しそうになると声をあげて笑う。そんなシーンを撮ってしまう。

 最後はめちゃくちゃになるけれども、チャップリンは男らしく引いていく。これは『男はつらいよ』の寅さんの原型ですね。自分は他人の幸せを願っていく。ラストシーンの切なさは、今までのチャップリンの映画にあった希望はあまりない印象。

 サーカスの楽しさにある人間の悲しき業を描いた傑作でした!