「ミスティック・リバー」
人生は疑いようもなく残酷で、時間が解決してくれる、なんて言葉はまやかしでしかないのかもしれない。人間の心では受け止めきれないものに遭遇してしまった時、人はどうすれば良いんだろう。
凄い作品でした。これぞサスペンスであり、ミステリー。あんなにも悲しい結末なのに、誰1人として報われることがないのに、最後に出てきたパレードの演出には、悲喜交々を全て包み込む様な暖かさすらあった。
やっぱりこういう幼い頃の友人が月日を経て再開する、という物語はハズレがないなと。「スリーパーズ」然り、今作然り。
彼らはもうコンクリートに自分の名前を書いたあの頃に戻ることは決してないのだと、そう思うとずっと辛かった。特にデイブ。名前を書き切ることも出来ず、自分の人生を生き切ることも出来ず、ずっと幼い頃の自分を救いたくて救えなくて。「誰かに話す」なんてそんな生温い方法じゃ彼の傷が癒えるはずもない。
ジミーもきっとこれからずっと、誰にも話せず、自分自身の罪を抱えて生きていくんだろうな。「あの時ああしていれば」そう思いながら。彼が本当の意味で自由になることは、もう無いのかもしれない。
人は無情だし、人生はもっと無常で無慈悲な事が多い。時と共に変わっていってしまうことの方が多いし、不変のものなんて何も無い。そう考えると、デイブはずっと変われずにいたのかもしれないな。記憶に囚われて、抜け出すことも出来ずに、もがいていたんだろう。
イーストウッド監督、毎回痺れるセリフを入れてくるから本当…すごすぎる。今作だったら、「寂しいじゃないか、人を傷つけるなんて」が一番好きです。
この作品、私がミステリーが好きな理由が詰まっていて、本当に良かった。誰かを傷つける。それは自分自身の為だったり、誰かの為だったり、誰の為でもなかったりする。人間であるからこその弱さ、脆さが現れるのが犯罪だと個人的には思っているので…。
誰かと語り合いたくなるミステリーは久しぶりでした。いや〜良い作品だった。