鈴木ピク

ストップ・メイキング・センスの鈴木ピクのレビュー・感想・評価

5.0
4Kレストア版IMAX上映。

40年前の伝説のライブが冷凍保存されて目の前で解凍された。カメラとデヴィッド・バーンの共犯関係。クリアな音がずっと腹に響いて、バンドセットが組み立てられる演出や会場の規模の「舞台ぽさ」も相まって、映画が場と一体化する。

ただライブを丸っと映しているだけなのに、冒頭足元から全身なめて首を前後に振りカットインしてくるデヴィッドの表情、そこから88分間ひたすら「映画」としか言いようがないアクションが展開し、完璧なカッティングで繋がれていく。神に愛されたような時間。何の? 映画の、音楽の、ステージの。

いつかちゃんと見ようと『アメリカン・ユートピア』も冒頭しか触れておらず、トーキング・ヘッズについてミリしらも同然なのに、恐らくサポートメンバー含めてそこに姿を現すアーティスト全員が被写体として絶えず魅力の塊で、曲も演奏もすぐ好きになった。そのすべてが絶妙な編集で動的に交錯する。

そもそもライブとして演出がずっと洒落てるのもあり、ジョナサン・デミはそれらを映画的に切り取ろうという目論見はあったと思うけど、がに股ダンスでギター弾くティナやパーカッションのスティーヴの自由な往来でショットが生まれては運動に破壊されるような、瞬間の創造がずっと連続して静止しない。

同時に精緻に計算されてるなーと思ったのが、序盤は結構客席も目に入るのが(そこで普段よく通う舞台ぽいなと身近に感じてた)、中盤どんどん画面が白熱のパフォーマンスに集中して、最後に再び客席側が解放される構成。俺は確かにそこにいて、40年前の観客と目が合った。

誰が何しても絵になってしまう上に予測不能で気持ち良い動作をしてくれるので、予備知識なしで良い映画に出会えた時のあの「ウソだろ、ウソだろ、ウソだろ……」が無限に続いてエンドルフィンが出てるのハッキリ自覚できて、ずっと揺れてました 拍手しちゃった。
鈴木ピク

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