荒野の狼

鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言の荒野の狼のレビュー・感想・評価

4.0
『鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言』は山崎佑次監督の2011年制作の88分のドキュメンタリー。西岡常一(1908-1995年)が登場するドキュメンタリーTV番組としては、NHKの『プロジェクトX』(日本放送協会)「そして、風が吹いた 幻の金堂 ゼロからの挑戦」(2000年)があり薬師寺の金堂の再建ので。古代の大工道具「槍鉋(やりがんな)」の復元の部分は本作と重複する。本作ではTV番組と重複しないことを意識したのか、薬師寺の伽藍の再建では金堂についてより、西塔や回廊の再建を中心に紹介。その中で、西岡の生い立ちと生涯を振り返る構成。
タイトルの「鬼」から想像する宮大工とは異なり、西岡はきわめて理論的であり、農学校出身の知識と経験から木の特性を熟知し、千年間の耐久性のある建物の建築をの為には木材を使うべきである主張する。法隆寺の修理にはコンクリートの使用に反対するが妥協を強いられ(これが薬師寺の棟梁になる契機になる)、法輪寺三重塔の再建時には鉄骨の使用に反対している(このエピソードでは西岡は茶目っ気たっぷりに裏話で実際にはどうしたかを語っている)。本作は薬師寺と法輪寺を訪れる前後に見ておきたいドキュメンタリー。ちなみに法輪寺の三重塔は1975年の再建であるが、徒歩10分ほどの距離にある法起寺の三重塔は国宝。この二つの寺は法隆寺から徒歩で20分ほどであるが、中間に国指定史跡の中宮寺跡があり、コスモスの時期などには徒歩で訪れるのもよい。
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