Omizu

わが青春に悔なしのOmizuのレビュー・感想・評価

わが青春に悔なし(1946年製作の映画)
3.8
【1946年キネマ旬報日本映画ベストテン 第2位】
黒澤明×原節子という最強タッグによる戦後作品。京大事件、ゾルゲ事件という日本の暗部を力強く生きる一人の女性を描いている。興行的にもヒットし、「〇〇に悔なし」という言葉が流行した。

さすが黒澤明。初期ならではの瑞々しい感性と力強い演出が素晴らしい。このような役を原節子がやったというのが驚き。

公開当時はエキセントリックなヒロイン像に賛否が分かれたらしい。それも納得の怪演をみせた原節子がひたすらに素晴らしい。個人的には支持したい。スパイとなじられた夫に忠義を尽くし通す女性、静かな闘志を持って生きる女を見事に演じている。

脚本は久板栄二郎で、この年キネ旬日本ベストワンとなった木下惠介作品『大曽根家の朝』でも脚本を手掛けている。戦後日本という暗い時代をさすがの展開力を持って描いている。

そして何より黒澤明の手腕。虐げられても誠実に生きることを諦めない女性を見事に描き出している。二つの事件をもとに骨太の社会派ドラマとして破綻なく演出している。力強い。

黒澤明の演出、久板栄二郎の脚本、主演の原節子という組み合わせが奇跡的にマッチした社会派人間ドラマとして見応えあり。素直に映画として面白い。
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