ねまる

サルバドールの朝のねまるのレビュー・感想・評価

サルバドールの朝(2006年製作の映画)
4.5
出会ってしまった…
久々に胸にズシンとくる良作。

1日経っても忘れられなくて、ずっとこの作品のこと考えてた…

重いから人には勧め辛いけど、観て欲しくて、Yahooさんから借りた解説つける。

「フランコ政権末期のスペインを舞台に、不当な裁判によって死刑判決を受けた若きアナーキスト、サルバドールとその家族や友人の戦いを描く社会派ドラマ。
スペインのアカデミー賞と言われるゴヤ賞で11部門にノミネートされた話題作。
サルバドールを『グッバイ、レーニン!』のダニエル・ブリュールが、彼の元恋人を『トーク・トゥ・ハー』のレオノール・ワトリングが演じる。
理不尽な運命の瞬間を待つ主人公と、彼のために戦い続ける人々の姿が感動を呼ぶ。」


スペインでは誰もが知っているような有名な実話らしくて、
結末を知っていても楽しめるのだろうけど、私は知らずにサルバドールの家族の一員のような気持ちでハラハラしたので、細かい感想は下にネタバレコーナーで書きます。

観終わった後、心に重りが繋がれるような良質な作品。
「本当にいい映画は心を傷つける」って誰かが言ったそうだけど、まさにそう。

言葉に出来ない感情が涙になって溢れ出てくる。

政治的な話、
一人の青年の信念の話、
周りの人々との関わりの話。

社会派ドラマといえばそうかもしれないけど、それだけではない描写があるよ。


↓ここからネタバレ入ります。

この話の評価が分かれるのは、
サルバドールへの無罪や恩赦を願えるかどうか。

序盤、銀行強盗などの犯罪シーンが描かれたり、自分だけのせいでないにしろ警官を殺害してしまったのは事実だから、
後半のサルバドール援護にみんなが動いていく様子に共感できないんだと思う。

作品の中でも、
1.死刑の理由は警官殺害のみ
2.サルバドールが撃ったのは三発、遺体には5〜6発
3.弁護側の証言は全て拒否
4.警察による側近殺害の報復の生贄
などの描写はあるんだけどね。

当時のフランコ政権の実態について(なぜ彼らが行動を起こさなければならなかったのか)深く描かれていないのと、
強盗や殺人をしたことを正当化しているとは思われないような表現にしなければいけなかった点で、
特に前者をあまり知らなければ、ん?と思ってしまうのかもしれない。

それでも、彼のことを想い涙してしまうのは、
サルバドール個人として、彼を死刑にさせてはいけないと感じさせていること。

社会とか倫理だけでなく
弁護士や看守が彼という人間性に惹かれていく様子や、
サルバドールを想う家族の姿を丁寧に描いているんだ。

最期の時を笑って過ごそうとするけど、必死に涙をこらえている家族の様子に
「いやでも犯罪者だから」なんて思えないよ。

そしてあの死刑にする器具の惨さ。
サルバドールが「最低だな」というけれどその通り。
私も一緒に「フランコの人殺し」って叫びたかったし、
スペイン領事館にマシンガンぶっ放したかった。

ただ、サルバドールの死は無駄ではなく、この事件から国民が政治意識を持つようになったと締めくくられる。

でも、忘れちゃいけないよ。
彼が願っていたのは名誉ではないことを。
名誉なんていらないから、生きて出たいと願っていたことを。

Bye bye darling, good bye
ねまる

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