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木を植えた男のshxtpieのレビュー・感想・評価

木を植えた男(1987年製作の映画)
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「ジャン・ジオノの原作に感銘を受けたバックが、5年半の歳月をかけ、2万枚におよぶ作画作業の大半を一人でこなして作り上げた代表作。アカデミー 短編アニメーション部門受賞」。『フレデリック・バック作品集』を見ていって、ようやくたどりついた『木を植えた男』。名作の誉高く、それに値する素晴らしさである。動く印象派、命を吹きこまれた点描画、ぐるぐると回るカメラ、荒れ地と対比された、命の蠢きに満ちた森。バックのストイックなアニメーションは、そのまま木を植えた男の植樹に重なる。二度の戦争の描写が挟まれるものの、これまでのバックの作品のような単純な文明批判はなく(原作があるためか、ひじょうに簡素で削ぎ落とされたストーリー)、けれども、それゆえに、神話めいた、めくるめく神秘性にあふれている。なによりも、上の繰り返しになるが、荒れ地にどんぐりをひとつひとつ植えていった男の「手」の仕事は、そのままバックが「手」で描くアニメーションと相同であることの感動といったらない。

DVDの映像特典のインタビューで、バックは「木は象徴的な問題です。人生の諸問題を表している。問題に直面すると逃げる人もいます。その一方で、問題に取り組み、解決を図る人もいる。問題に取り組む精神こそが、豊かな果実をもたらすものなのです。そうした精神が、異なる者同士の紛争を解決し、よりよい世界を作るのです」と語っている。
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