こぼちゃん

動乱のこぼちゃんのレビュー・感想・評価

動乱(1980年製作の映画)
3.7
五・一五事件から二・二六事件までの時代、寡黙な青年将校とその妻の生きざまと愛を描いたもの。

宮城啓介(高倉健)の部下である溝口英雄が脱走した。家に帰っていないか実家を訪ねると姉の薫(吉永小百合)が借金の方として女郎屋に売られることを知る。数か月後に啓介は朝鮮の国境警備の任に当たる。兵士宿舎の慰労に女郎屋が来た時、薫を見つけ思わず彼女を引き取る。匪賊との小競り合いから日本軍が兵器の横流しをしているのを知り上司を責めるが、薫の話を出され黙認。結果、弾丸が尽きた部隊は剣で突撃をかけ多くの戦死者を出した。啓介は軍に対する不信感と怒りで肩を震わせた。

弾丸が尽きた部隊は剣で突撃をかけ多くの戦死者を出した。啓介は軍に対する不信感と怒りで肩を震わせた。

大日本帝国陸軍の高級将校の間では、明治時代の藩閥争いを源流とする、派閥争いの歴史があった。1930年代初期までに、皇道派と統制派があった。

皇道派は天皇を中心とする日本文化を重んじ、物質より精神を重視、無論、反共産党主義であり、ソビエト連邦を攻撃する必要性を主張していた(北進論)。

統制派は、当時のドイツ参謀本部の思想、ならびに第一次世界大戦からの影響が濃く、中央集権化した経済・軍事計画(総力戦理論)、技術の近代化・機械化を重視、中国への拡大を支持していた(南進論)。

二・二六事件は、隊付将校が政治的な思想を持つに至った背景の一つには、当時の農村漁村の窮状がある。隊付将校は、徴兵によって農村漁村から入営してくる兵たちと直に接する立場であるがゆえに、兵たちの実家の農村漁村の窮状を知り憂国の念を抱いた。

青年将校たちは、農村や漁村の窮状と天皇の為にと部下の下士官兵1483名を引き連れて決起し総理大臣や各大臣、教育総監、侍従長官邸、各新聞社、警視庁など20ケ所弱を同時に襲撃。その思いは天皇には届いておらず、反逆者として処刑。これらを機に、大きく軍部主導の国へと変貌していく。

歴史は語れるのは、過去のことか評論家。真っただ中にいる人は、自分の周りしか見えず、正しい判断ができないもの。各論では理由があっても、人の幸せや国の幸せで見ると難しい。
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