風に立つライオン

砲艦サンパブロの風に立つライオンのレビュー・感想・評価

砲艦サンパブロ(1966年製作の映画)
3.9
 1966年制作、ロバート・ワイズ監督によるヒューマンドラマである。

 ロバート・ワイズ監督といえば「ノートルダムの傴僂男」、「深く静かに潜航せよ」、「市民ケーン」、「ウェスト・サイド・ストーリー」、「サウンド・オブ・ミュージック」など多彩な作品が並ぶが、いずれもヒューマンでハートフルな趣が通底している傑作揃いである。
 一見硬派に見える戦争ものにおいてもじっくりと人間ドラマを描きつつ、ペーソスを落とし込みながらひいては反戦メッセージが滲むものが多い。
 まさに巨匠と呼ぶに相応しい監督である。

 この物語は1926年の第二次世界大戦前の中国が舞台である。

 揚子江に駐留しているアメリカのオンボロ砲艦サンパブロ内で起こる乗務員達の人間ドラマと中国国民党と学生達の一斉蜂起に対峙し、犠牲になっていく水兵達を描きながら、大国による派兵の愚かさと激しさを増していたベトナム戦争への批判が見てとれる反戦映画である。

 アクションが醍醐味であるスティーブ・マックウィーン主演の映画の中でも極めてヒューマンで切ないものの内の一つである。

 船内には雑役をやる中国人船員が雇われていてその中にポー・ハン(マコ岩松)という男がいた。
 純粋で一生懸命なポーに一等機関士ジェイク(スティーブ・マックウィーン)が彼のスキルを教え込む。
 ポーのボクシング試合ではセコンドについたりもする。
 いつしか二人の間には師弟関係にも似た絆ができていく。
 この雇われ中国人船員達を束ねる中国人ボスがこの艦を実質牛耳っていて艦長たるコリンズ大尉(リチャード・クレンナ)も手を焼いている始末であった。
 やたらと強欲、狡猾でポー達も酷使されている中、ジェイクもポー側に立ち中国人ボスに対峙していく。
 正規船員の中にはあのフレンチー・バーゴイン(リチャード・アッテンボロー)もいて、上海の酒場の女性にのめり込み破滅の道を辿ったりする。
 また上海のアメリカ人伝導団で教師のシャーリー・エッカート(キャンディス・バーゲン)が登場する。
 彼女は元来、知的でエレガントな女優であるが、本編におけるチャイナドレスにはハッとしてGoo!だったりする。

 さらに後に「ブリット」では上司になるサイモン・オークランドも荒くれ船員役ストウスキーで登場。
 砲艦サンパブロの艦長コリンズ大尉はあのランボーの上官大佐役のリチャード・クレンナが演じている。

 育て上げたポーとの究極の救済とも言える別れはなんとも切ない。

 そしてラストにジェイクらは中国人達の外国人排斥運動の中で、シャーリー達を救出するが‥。

 ロバート・ワイズ監督の味付けもいいが、かつての名優達が揃っていい映画を創り上げた感がある。

 是非ともスティーブ・マックウィーンにアカデミー賞主演男優賞を取らせてあげたかった珠玉の一本である。