Jimmy

火火(ひび)のJimmyのレビュー・感想・評価

火火(ひび)(2004年製作の映画)
3.8
田中裕子の名演光る感動作!
信楽焼の女流陶芸家として、そして母親として、パワフルに活動する愛情にあふれた女性。
最初は苦労を重ねて初めて信楽焼の女流陶芸家として認められる話かと思って観ていたら、途中から清子の息子=賢一が白血病と診断されたことから骨髄バンク立ち上げに尽力する神山清子を描いた実話に基づくドラマ。脚本は高橋伴明監督による。

冒頭は、モノクロがかった映像で死者を迎えるシーン。
映像が鮮明なカラーとなって、若き日の神山清子(田中裕子)と幼い兄妹の風景となる。
夫は女性と駆け落ちしてしまって逃げられた清子だが、母親の清子は激しい気性丸出し。息子がインスタントラーメンを万引きしたら、インスタントラーメンを袋から出して息子の口に押し込む凄さ!万引きされた店の人が、そこまでやらんでも…と気の毒がるほど。
神山清子は陶芸に入れ込んでいて、かまどと焼き物と闘う日々を過ごしている。気にいらない作品は壊してしまう。そして、ようやく満足いく焼き物が出来上がる。
だんだんと知名度が上がって、神山清子展を開催したりして、借金がなくなるが、その時に「♪借金チャラ」の踊りが可笑しい。田中裕子の滑稽な踊り…(笑)

成長した息子=神山賢一(窪塚俊介)は陶芸学校の女性=みどり(池脇千鶴)とイイ仲になり、ラブホへ。二人とも初体験。
こういう初々しい場面を観ていると、「いいなぁ~、若い人達は。初体験か…」と思ってしまう(笑)
それにしても池脇千鶴は『ジョゼと虎と魚たち』でもラブホのシーンがあり、あちらではバスト披露していたが、この頃、ラブホ場面が続いていた感あり。(この『火火』の方が『ジョゼ』より少し後のはず…)

そして、息子の賢一が慢性骨髄性白血病と診断されてからは、闘病と骨髄バンク立上げの物語になっていく。
神山清子がみどりに「賢一が死んだら…。もし生き長らえても貴方に十字架を背負わせるわけにはいかんのや!」と別れさせる母親。思いやりが感じられて感動。

息子のドナー探しに奔走する母親=清子であるが、ここで存在感を見せるのが清子の弟子となった女性=瑞香(黒沢あすか)。
黒沢あすかは塚本晋也監督の『六月の蛇』でも存在感を見せたが、この作品でも素晴らしい!
そして、清子が瑞香に言うセリフ「形あるものは壊れるんや。また作ればいい。しかし、心が壊れたら作れんのや!」にも感動。

また、この映画の後半、テレビ映像として「サッカー日本代表 井原正巳」が登場するが、井原は2002年に浦和レッズでプレイしたのを応援していたので、懐かしい!
素晴らしいディフェンダーだった。その頃の浦和レッズには、永井雄一郎・エメルソン・トゥット・福田正博・坪井・室井・山岸などなど懐かしい豪華メンバー多数。
(話がそれてサッカーに行っちゃいました…)

この映画では「♪島原の子守唄」が効果的に歌われており、何と言っても「田中裕子のキリッとした顔」がとても凛々しい。
そして田中裕子がかまどに薪をくべるシーンが素晴らしい。
なかなかの感動作であり、良い映画を観た!…と思う。
Jimmy

Jimmy