A8

ドゥ・ザ・ライト・シングのA8のレビュー・感想・評価

ドゥ・ザ・ライト・シング(1989年製作の映画)
3.9
憎しみからは憎しみが生まれる。
ハンムラビ法典のあの有名な「目には目を」では全員が盲目になるだけである。と最後のメッセージが痛いほど響いた。

気温37度の暑さのなか、今日も人々はどこかイライラしているよう。イタリア人が、黒人が、韓国人が、、今日もどこかに落ちている不平不満が当てつけのように人種への斜めに構えた構造をまた深く作り出し対立を深める。だが、仲良くしようとすればできるはずだ。実際、その感覚もこの映画では伝わってきた。

イタリア系の家族が営むピザ屋で働く黒人の主人公は、今日も適当に働いていた。いつものように怒鳴られる彼は、不貞腐れたような表情を見せ時折反論しながらもお金のために働いているよう。しかし、はたまた問題が起きると、同時に「人種」の文字もひっついてくる。黒人が、、韓国人が、、プエルトリコが、、と。日本に住んでいるとわからない感覚がこの映画の中に詰まっている。そして人種差別から巻き起こる憎しみという不の構造がわかりやすく描かれている。

前半はこっちまでジメジメした暑さが伝わってくる気温、そして、そこで暮らす住民たちの鬱憤をためつつも日常生活を過ごす姿を。
しかし、あるきっかけにより急に沸点に達したように憎しみが溢れ出す、、そこはまるで地獄であった。ジメジメした暑さどころか我すら忘れてしまったようだ。

人種差別の構造をこれだけ明確にわかりやすく、且つ心を抉る辛さを同時に描いた作品は、なかなかないだろう。

主観が過ぎる、周りの偏りが過ぎる、極端過ぎる主張ほど盲目なモノはない。そこに憎しみの暴力があれば、さらなる悲劇がお見舞いされることだろう。そして、それは自衛と錯覚して容赦なく傷つけて傷つけられるだろう。

差別とはなぜ起こるのか負の連鎖はなぜ続くのか、、この作品にその構造が詰まっているそして、是非観てほしい。
A8

A8