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禁じられた遊びのkanacoのレビュー・感想・評価

禁じられた遊び(1952年製作の映画)
3.5
1940年6月、第二次世界大戦の頃のフランス。情緒溢れる美しいギター音楽と〈禁じられた遊び〉をする少年少女の心理や境遇を通し静かにも強く反戦を訴える作品。死が身近である故に意味が曖昧な子供たちの残酷な遊戯が示すテーマとは…。難しくて原作も読んで色々考えたけど、いずれにしても悲しいお話😥(140文字)

****以下ネタバレあり&乱雑文****

◆あらすじ◆
1940年6月、第二次世界大戦の頃のフランス。ドイツ軍から逃げるために両親や愛犬と共にパリから逃げ出し、同じ境遇の人々の流れにそって街道を歩いていた幼女ポーレット。しかしドイツ軍の戦闘機による襲撃にあいポーレットは両親と愛犬をいっぺんに亡くしてしまう。そのうえ周りの大人に愛犬の亡骸を川に捨てられてしまい、追いかけたポーレットは動かぬ愛犬を抱きながら川沿いの道を彷徨う。そこに農家のドレ一家の末息子である少年ミシェルが通りかかる。ミシェルはポーレットの境遇を知り彼女を家に連れて帰る。ドレ一家に居候することになったポーレットはミシェルから色々なことを教えてもらう。神への信仰、お祈りの仕方、死んだもののためにお墓をつくるということ。それを聞いたポーレットは…。

❶少年少女の心理や境遇を通して静かにも強く反戦を訴える映画〈禁じられた遊び〉

シナリオライターで小説家であるフランソワ・ボワイエの同名小説『禁じられた遊び』をルネ・クレマン監督が実写映画化。ボワイエはこの映画のセリフについては共作という形で携わっているみたいです。戦争孤児となった幼い少女ポーレットと彼女の世話をすることになった幼い少年ミシェルの運命を描く〈少年少女の心理や境遇を通して静かにも強く反戦を訴える映画〉として有名なイメージ🤔

ずっと気になっていた作品でしたが、シロクロなクラシック作品ですしテーマが反戦ということで「重そう…。フラットな気分の時じゃないと見れなそう…」と思いズルズルと後回しに…。でもフォロイーJGさんのレビューみて「鑑賞しよう!」と発起✨👀

そして見てみたところ…なんだか私には難しい作品でした🤔

❷「死」が身近である故に意味が曖昧な子供たちの残酷な遊戯のテーマとは…(困)

第二次世界大戦の頃。両親・愛犬とパリに住んでいたポーレットはパリをドイツ軍に占領され田舎へと逃げていきます。同じような人々が群衆となって道を歩いており、しかしその行列にさえドイツ軍の戦闘機は銃撃を…。飛び出してしまった愛犬をポーレットが追って飛び出し、そのポーレットを止めようと両親が追う。そして銃弾が当たって両親も愛犬も死んでしまいます。一人ぼっちになったポーレットは「死」をきちんと理解できないまま愛犬の亡骸を抱いて彷徨い、やがて農家のドレ一家に拾われます。ポーレットを気にかけるのは彼女を家に連れてきたドレ一家の末息子のミシェル。ミシェルは甲斐甲斐しくポーレットの世話をやき、幼過ぎて「祈り」どころか「神」さえ知らない彼女に教えていきます。

生きものが死んだらお墓をつくること。
祈りを唱えること。
十字架をたてること。

「どうしてお墓をつくるの?」
「1人じゃ寂しいからだよ」

ポートレットは愛犬のお墓をつくりながら「(愛犬が)寂しくならないように仲間が欲しい」と言います。ミシェルは応えます。「たくさん十字架がいるね」

こうして2人だけの秘密の〈禁じられた遊び〉が始まります。

戦争の頃。「死」が身近である故に意味が曖昧な子供たちの残酷で非道徳的、ルールを逸脱する悪意なき行為…。ハードなストーリーですが代表曲「愛のロマンス」を筆頭とする哀愁が漂う美しいギターの旋律と共に静かで素朴なテイストでお話は紡がれます。

冒頭で両親が殺される場面はショッキングですが直接的な戦争シーンはそれのみ。その後は戦争の影響を確かに感じさせながらも、それとは少し距離を置く田舎の農民たちの日常が描かれて行き、ポーレットとミシェルの〈禁じられた遊び〉とそれによって引き起こされた事件の顛末を描くことによってその根本原因と言えるだろう戦争を否定していきます。

ただ私は…🤔初見時「あくまで子供たちは被害者で戦争が悪いという悲しい話なのよね」には感じず、結末も悲しくは思えず。ポートレットの何を考えているのか分かりづらい表情の起伏の無さや、淡白な振る舞い。都会から田舎へ来たゆえに異質に映る存在感、「無邪気だし意味を知らないの!」の一点ばりでワガママかつ遊び感覚でねだるポーレットに対し「かなりの悪女だな…🙄」って思ったし、悪いことと知りながらもポートレットに好意があるから悪行を重ねるミシェルはいわゆる「〈運命の女〉にひっかかって破滅する犯罪者じゃん🙄」と思ったし、2人の〈禁じられた遊び〉を火種に混乱して短絡的かつ暴力的な争いをする愚かな大人たちも強調されているし、もう全てひっくるめて「これ全員が戦争のメタファーだよっていう話」なのかなぁ??と思いました。〈人間の中で最も純真で無垢な状態である子供の心がしたがる行動がコレ〉なら、そりゃあ人間は根本残酷で〈戦争を引き起こすモノ〉なのだろうよ…とすらボンヤリ😶

ところがラストシーンにて「え?あの悪女なポーレットが人間アピールしてきたのですけど…🙄」となって、じゃぁやっぱり「あくまで子供たちは被害者で戦争が悪いという悲しい話なのよね」作品なのか…?とグルグル…😵

うーん。正直、けっこう“ぼんやり”なところを情緒溢れるギター音楽でエモーショナルへとごまかしているような気すらする…(責任転嫁)😂

残念なkanacoには推察力がなーい!
わからーん!c(,Д、と⌒c)つ彡バタバタ

❸【完全ネタバレ注意!!】小説と映画の相違点と比較

…というわけでこのモヤモヤを解決する手立てはないかと次の日、図書館に行って原作を読んできました。自分用に映画と小説のあらすじを書き出しているので完全ネタバレ、長文かつまとまり無し(1回しか見てないし読んでないので誤りもあるかも…)のため一番後ろに記載します(あと長すぎる)。ご興味のある方だけ大らかなお気持ちでご覧いただけると幸いです。

なお結論としては、映画版はやはり〈大人〉の全般的に傲慢で自分勝手な振る舞いによって虐げられる子供たちの悲劇を特に強調して描かれており、その大人の横暴で愚かな振る舞いの最たるものが〈戦争〉であるという反戦映画かな…と思いました!

✞🐝✞「今回図書館で借りた『禁じられた遊び』とても年季が入ったボロボロの本でした~(臭いすごいし…)。どうやら今は角川文庫で出版されているようですが、図書館にあったのは昭和31年3月20日に発行された河出書房、平岡昇さん訳の新書サイズ。裏表紙に購入日がスタンプされているけど昭和31年4月15日って押されている。そりゃぁ古書っぽく劣化しているはずだ~🥺値段も110円って書いてあって……

は??110円!?

203ページのサクっと読める小説でしたが、昭和31年って小説110円だったのか…(そりゃぁ物価は違うでしょうけど)!なんだかそれが一番驚いちゃいました!!!!🤣」


★゜。☆。゜★゜。☆。゜★゜。☆。゜★゜。☆。゜★

❸【完全ネタバレ注意!!】小説と映画の相違点と比較

以下、映画版と小説版の結末に対する完全なネタバレがありますので未鑑賞、未読の方はご注意ください。

自分のメモのために”あらまし”全てを書き出します。

〈注意、丸っとネタバレ〉

★映画★
ポーレットは両親や愛犬とパリから田舎に向かって逃げていたが、途中で皆が死んでしまう。大人に愛犬を川に捨てられて追いかける中で迷子になり愛犬を抱えてさまよっているところでミシェルに出会う。ドレ一家に迎えられる。ミシェルからお墓の意味を教えられる。墓を作るが愛犬が1人では可哀想だと言う。他の生き物を殺して埋葬することでお墓を増やしていく。お墓には十字架が必要である。十字架を作ろうとするも子供には作成が難しい。ミシェルはポーレットのために霊柩車や墓地から十字架を盗むようになる。ドレ一家は隣人のガナール家ととても仲が悪かったため、霊柩車の十字架がなくなったことを父親に問われた際ミシェルはガナール家のせいにする。ミシェルは教会の祭壇から美しい十字架を盗もうとして司祭にバレる。墓地の十字架がなくなったことをお互いの家のせいにするドレ一家とガナール家は殴り合いのケンカをする。しかし司祭の発言によってミシェルが盗んでいたことがバレる。ミシェルが罰で激しく折檻されてポーレットは怯える。その間に警察がくる。それはミシェルを逮捕するためではなくポーレットを孤児として施設にいれるためだった。「盗んだ十字架の場所を喋るからポーレットを連れて行かないで!」ミシェルはそう父親に懇願する。しかし十字架の場所を教えてもポーレットは連れていかれてしまう。父親に騙されポーレットと引き離されたミシェルは怒って秘密の墓地に向かい、盗んだ十字架を川に投げ捨てていく。一方引き渡されたポーレットが人込みの多い場所で1人待たされているシーンへ。その時に近くで「ミシェル」と呼ぶ声を聞く。それは別人だった。ポーレットは堰を切ったように「ママ!ミシェル!ミシェル!」と泣きながら人込みの中走り出して姿を消す(FIN)

★小説★
ポーレットはパリから田舎に向かって父親と逃げていた。母親はもっと前に死んでおり“今”父親も死んでしまった。父親の死体に知らぬ犬が寄ってきた。ポーレットはその犬にとびついたが犬は畑の方へいってしまう。その犬も死んでしまう。犬を抱えてさまようポーレットはミシェルに出会う。ドレ一家に迎えられる。ミシェルからお墓の意味を教えられる。墓を作るが、犬が1人では可哀想だと言う。他の生き物を殺して埋葬することでお墓を増やしていく。ある日父親にミシェルが折檻されてポーレットはひどく怯える。一方でポーレットはミシェルを愛していること自覚する。お墓には十字架が必要だったが十字架を作ろうとするも子供には作成が難しい。ミシェルはポーレットのために霊柩車や墓地から十字架を盗む。ポートレットがミシェルに初めて微笑み、ミシェルは感動して接吻をしたくなる。ドレ一家は隣人のガナール家ととても仲が悪かったため、霊柩車の十字架がなくなったことを父親に問われた際ミシェルはガナール家のせいにする。ミシェルは教会の祭壇から美しい十字架を盗む。十字架が盗まれたため司祭は警察を呼ぶ。墓地の十字架がなくなったことをお互いの家のせいにするドレ一家とガナール家は殴り合いのケンカをする。大人たちが騒ぐ中でミシェルは盗みがバレるのではと恐怖する。それを見ていたポートレットは礼拝堂のてっぺんにある大きな十字架の場所まで登って身を隠したらどうかと提案する。ミシェルは上る。しかし足を崩し十字架に摑まるも十字架が外れてしまい、十字架と一緒に真っ逆さまに落ちてしまう。死んでしまったミシェルを見て涙するポーレットはミシェルを川へ運び1人弔う。そんなことを知らぬ2つの家族は子供たちが作った秘密の墓地を見つける。立派な墓地に対して誰もが唖然とし「十字架のある場所には神さまがいるかもしれない…」と帽子を外して墓地に敬意を示す。しかしやがて自分の家の十字架を回収していく。一方、ポートレットは日が暮れるまで川辺でじっとしていた。そして1人、国道に向かって歩き出す(FIN)

というわけで大体同じだけど全然違う(どっち)🤔

・小説は第三者視点の文章だがポーレットやミシェルの目線で進む。そのため映画では淡白でワガママなポーレットも彼女の行動に道理があることが分かる。

・映画版ではポーレットとミシェルの恋愛感情は断言せずにフランス映画らしく演出に纏わせる感じ。そのため幼き子供たちの“友愛”のレベル感は察するしかないが小説だとバッチリ好意がある文が有り。ギター曲が〈愛のロマンス〉なのはここで納得!

・双方とも戦争による悲劇を主張している一方で、映画よりも小説の方が宗教色濃い。〈十字架〉が墓地アイテムというだけでなく神への信仰の象徴である面をより強く感じる。また教会や司祭の登場回数も多い。

・小説ではポーレットとミシェルにとってドレ一家…特に父親は粗野で(お祈りもきちんとできないほど)無知で横暴、嫌悪する存在であり恐怖の対象であることが記述。子ども扱いされず弱者として虐げられるのは小説も映画も一緒。

・墓地を作って遊ぶ、十字架を集めるという流れは同じだが結末が全く違う。映画版は2人は戦争孤児としてポーレットを警察へ引き渡しす〈父親〉によって引き裂かれる。父親の嘘に激怒しミシェルは十字架を投げ捨てる。ポーレットは新しい場所で泣きながらミシェルを求める。小説版ではミシェルは大人たちの騒ぎが大きくなっていくことに恐怖する。そしてポーレットの助言で逃げて教会の上に登り、今まで遊び道具として扱ってきた十字架と共に落下死する。まるで大人というよりは神から〈自分たちの行為の報い〉を受けるような形で死をもって引き裂かれる。ポーレットは1人、静かに自らドレ一家から去っていく。

物語について常に戦争が色濃く影を落としているのは小説も映画も一緒です。ただ小説から映画化への変更点について、ポーレットとミシェルを路頭に迷わせ虐げる対象が〈運命〉〈宗教/神〉から〈大人〉へとさらに大きくフォーカスしている点が顕著なのかなぁと思いました。映画のミシェルはラストに理不尽な大人への怒りで墓地の十字架を捨てていきますが、小説は怒りのシーンなくミシェルは自分の行いに強い恐怖を抱いたまま十字架と共に事故死。墓地の十字架は「神さまがいる場所である」として敬意を払われ回収されます。

結論としては映画については、やはり〈大人〉の傲慢で自分勝手な振る舞いによって強いたげられた子供たちの悲劇を特に強調した形で演出されており、その大人たちの振る舞いの最たるものが〈戦争〉であるという〈反戦映画〉かな…というところで腑に落ちました🤔

神をも含む小説版はもっと無常観の定義が広くて、それを〈大人〉に狭めることで反戦の意味合いをよりストレートにしたのが映画だったのかも(`ФωФ’) カッ!
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