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炎のごとくのryosukeのレビュー・感想・評価

炎のごとく(1981年製作の映画)
3.6
加藤泰にしてはテンポがゆったりとした作品だった。時代背景の説明描写やスローモーションの使用なども意外で、プログラムピクチャーのスケジュール制限から解放され、巨匠としての名前が確立すると作風も変わってくるのかなと思った。「お控えなさい」の異常な回数の繰り返しなんて象徴的な気がする。いやこれはちょっと面白かったけど。
ナレーションの多用もあまりイメージが無かったな。
若山富三郎、藤山寛美の二人が揃ってコメディ調で始まる序盤の暖かい雰囲気が心地よい。それ故に前半でヒロインが死ぬことに驚かされる。「沓掛時次郎」もそうだったんだけど、個人的には悲恋によって物語がウェットになる前の方が面白いんだよな。
主人公とヒロインの絡みを画面手前に配置し、遥か後方を花嫁行列が通っていく画のインパクトは凄かった。
菅原文太の感情が戯画化されたリアリティもへったくれもないオーバーアクトも中盤からしんどさというか食傷感が発生してくる。暗い寒々とした部屋に一人佇む(実際には大勢いる)シーンなどからも分かるように、そもそもリアルさは志向していない作品なのだろう。
ちょい役で出てきた菅井きんの大笑いはイカしていて印象に残った。
主人公が「女にむごい奴は許せない」的なことを言う割に、芹沢鴨の襲撃シーンで巻き添えになって情婦が傷付いているのも気になるんだよな(血を浴びただけかもしれないけど)。
主人公が桜町弘子にとって親の仇である設定とか、無理にドラマチックにしようとし過ぎでご都合主義的に思えるし、詰め込み過ぎてとっ散らかってくる印象は否めないな。
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