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間諜の東京キネマのレビュー・感想・評価

間諜(1964年製作の映画)
2.0
松方さん追悼の5本目。 時代遡って1964年の東映作品です。 原作は宮川一郎他、脚本は沢島忠・中島貞夫他、監督は沢島忠。 演者の書き出しは、内田良平、松方弘樹、緒方拳の三連名一枚クレジット。 緒方拳は新国劇のカッコ付きです。

松方さんの芝居パターンが多少解ってきたこともあって、まるで親族の学芸会を見る如く、身贔屓で松方さんを見ている自分がおります。まあ、好きなんだから仕方がないわね・・・(笑) 多分、この映画を見た人は、内田良平は格好いいねえ~、緒方拳もパワフルでいいねえ〜、それに比べて松方弘樹は何なのよ、素人臭いなあ〜、と思うでしょう。 でもね、当時としては大前提として映画の大画面スクリーンで見てる訳ですから、そこに新国劇のクドイ芝居をアップで見せられたら敵わんのですよ。 もう満腹過ぎてアップアップです。 特にこの頃の緒方拳は舞台出身の悪い癖が出てしまって、視線は定まらないし、それに汗だくで力いっぱい大声出すもんだから、なんか爬虫類の交尾を見てるような感じなんですよ(笑) でもね、松方さん、既に何本も映画には出演していますから、ここらへんの力加減は解ってるんですね。 映画の人ですからね。素人臭い感じも、設定としてそうなんだからいいじゃないですか。 これも立派な芝居ですって・・・。

映画としてどうかっていうと、これ最低の映画ですね。職人沢島忠がやってもこの程度しか出来ないというのは、企画が悪すぎます。 昭和39年ですから、既にどうすればテレビに勝てるのかを真剣に考えた結果なんでしょうが、“スリルとパンチの炸裂する秋のアクション大作! 間諜!”(予告編のキャッチコピー)という方向は日本映画には向かないですって(笑) こういったアクションものが今でも時々出てきますが、アニメは別として、実写ドラマで感心するものは一つもありません。 勝手に妄想すれば、沢島忠さんも解っていたと思いますよ。

1964年『股旅 三人やくざ』の撮影中に、中村錦之助から『俺、東映を辞めるよ』と言われた沢島忠。“そうか、だったら俺も辞めるわ。ここじゃ時代劇は撮れないもんなあ〜”と答えたというのが、ちょうどこの頃の話です。 沢島忠のような日本映画界の至宝と言えるほどの貴重な人材を使い切れない東映なぞ、この時代に潰れてしかるべきだったんじゃないでしょうか。日本映画没落の大戦犯ですよ、東映は・・・。
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