烏丸メヰ

回路の烏丸メヰのネタバレレビュー・内容・結末

回路(2000年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

海外リメイク『パルス』観たさにめちゃくちゃ久しぶりに原作『回路』をおさらい。

同僚の欠勤から日常に違和感が連鎖していく女性と、インターネットを始めた日に不気味な画面を見てしまった青年。
二人に巻き起こる、静かで得体の知れない、しかし確実な恐怖の侵食……

まだインターネットが電話回線で接続されていたり、今ほど手軽でなかった2000年代初頭の世間や観客にあった“電脳世界への手探り感”を上手く活かした、個人的にはJホラー黄金期の作品の一つ。
主軸キャストに「表情や金切り声の悲鳴やお色気を低予算で」と若手女性タレントを起用するホラー映画の多くとは異なり、恐怖に見舞われるメインキャラクターに男性を含むのも古き良きJホラーならでは(『CURE』や『リング』等がまさに)。

“小中理論破り”の様々なバリエーションが発展した時代のJホラーでありつつ、古典的~小中理論が築いた精神面への恐怖煽りと、黒沢清監督ならではの画面そのものが持つ湿度がかなり怖い。
黒沢清監督の映画って視線の誘導が本当に巧み。
構図的に自然と目がいく所に何かを映り込ませるとか、怖いものがここに出るだろとわかっててもじっとそこを見ちゃうし全然誘導的でなくて鼻につかない。
演出として押しつけがましくない、恐怖のわびさびみたいなものを感じる。
メタバースやオンラインゲームなどの“ネット世界”がまだ提供されていなかった時代、オンライン上に「空間(のようなもの)」といった概念をイメージしていたストーリーのエキセントリックさが今から見ると凄まじい。

ストーリーはふわっと劇中で説明がなされるものの、難解かつトンデモで規模感が何とも言えない。
死者の行くあの世が満杯になってきた時に偶然この世と繋がる道が出来てしまい、死者の世界の幽霊達は
「もう新規幽霊の場所ねーから!」
と、人間が幽霊になってあの世へ来ないようこの世に魂を固定する(固定された人はシミになる)、って話だと思うんだけど。
武田真治さん演じる男性がなかなか良い味出してて怖いな。理系のオカルト語りってそれだけで怖い(笑)

筒井康隆氏の小説『◯◯は満員』がめちゃくちゃ優しく感じる作品(笑)。
烏丸メヰ

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