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夕陽の丘のodyssのレビュー・感想・評価

夕陽の丘(1964年製作の映画)
3.0
【やや起伏に乏しいムード・アクション】

石原裕次郎と浅丘ルリ子のコンビによる1960年代半ばの作品。DVDジャケット解説によると、宣伝コピーに「ムード・アクション」という言葉が初めて登場した映画だそうです。

ここでは石原はヤクザで、兄貴分が刑務所で過ごしている間にその情婦(浅丘)と関係ができてしまう、という役を演じています。他のヤクザ仲間に知られて争ううちに相手に拳銃で怪我をさせてしまい、函館に逃亡します。浅丘ルリ子はあとからきっと行くといって石原を送り出しますが、函館のホテルでじりじり待つ石原のもとにはなかなか現れません。一方、浅丘に指示されて石原が彼女の妹(浅丘二役)に会いに行くと、姉とそっくりで・・・という筋書き。ヤクザ映画らしく賭博のシーンがあり、また石原がギターをもって歌うシーンも盛り込まれていて(だからムード・アクションなのでしょう)、それなりに見せ場はありますが、女が来るのを待つという基本的な筋書きがどうしても起伏に乏しいので、強いインパクトを観客に与える作品にはなっていません。

この映画が作られた1964年と言えば最初の東京オリンピックの年ですが、函館を主たる舞台にしているせいかそういう時代の高揚感のようなものは感じられず、函館で青函連絡船から鉄道に乗り換える客が(いい席をとろうとしてでしょう)走って陸橋を渡っているところだとか、函館空港に到着する飛行機へのアナウンスで、「東京と仙台からのお荷物は・・・」と言っているのを聞くと、この頃の飛行機は東京から仙台経由で函館まで飛んでいたらしいと推測できるところが、時代を感じさせると言えましょう。
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