シネラー

猿の惑星のシネラーのレビュー・感想・評価

猿の惑星(1968年製作の映画)
5.0
最新作の公開も控えるシリーズだが、
観た事があるのはティム・バートン監督
によるリメイク版とリブート三部作
の"創世記"しかなかったので、
記念すべきシリーズ第1作を初鑑賞。
SFとしての世界観の面白さと
人類への警鐘とも言えるテーマ性が
とても素晴らしく、
結末を知っているからといって
面白さを損なわない傑作だった。

地球から320光年と旅した後、
テイラーをはじめとする
宇宙飛行士達は言葉を話す猿達が
人間を支配している惑星へと不時着し、
その真実を知っていくSFとなっているが、
描かれる世界観は決して
単純な空想作品としては割り切れない位に
現実を描いていると思った。
SF作品でありながら
現実社会における政治や宗教といった
生々しさが猿の社会でも描かれており、
それが人類と猿が逆転した
世界だからこそ強く反面教師として
感じるものがあった。
それでいてテイラーに手を貸す
ジーラやコーネリアスといった猿人に、
宗教からの教えを遵守して
彼らを弾圧するザイアスもおり、
キャラクターに個性があるのも良かった。
展開としても宇宙飛行士達が
未知の惑星へと辿り着き、
行き着いた先で未知の猿達に襲われるのが、
知らない場所と存在に狩られる
怖さがあって良かった。
加えて、1968年という製作年を疑う位に
猿達のメイク技術はリアルに感じられ、
アナログな文明ながらも世界観の美術も
含めて凄いと思った。

衝撃的で有名な本作の結末だが、
1968年という米ソの当時の軍拡競争を
考えると脳裏に過るのが核戦争による
人類の破滅であり、
そういう意味でも公開当時は
今よりも現実的で怖い結末だったの
かもしれないと感じるところだった。
結末を知っていいても
多大な陰鬱を与える上に、
人類を嘆くテイラーは印象的だった。
又、その直前での未来について問われた
ザイアスの返答が、
字幕では「未来を安泰にしたのだ」、
吹替えは「嘘と方便の上に築けばよい」
という言い回しになっており、
個人的に吹替えの訳がより
社会に対する痛烈さがある良訳だと思った。

なかなか生々しい位の現実味がある
名作SFだったが、
その後にシリーズが続くのも頷ける
素晴らしい傑作だと思った。
一先ず、リブート版から観ていこう。
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