ボブおじさん

ベッカムに恋してのボブおじさんのレビュー・感想・評価

ベッカムに恋して(2002年製作の映画)
3.7
日本がドイツ・スペインを撃破し決勝トーナメントに進出を決めたので、サッカー関連のこの映画をレビューしたい。

原題は「Bend It Like Beckham」
「ベッカムに恋して」という邦題がやたらと不評だったが、私は悪くないと思う。

この映画に限らずだが、邦題が正しくないと話題になることがあるが、そもそも原題が公表されているので、邦題はサブタイトル程度に思って、いちいち目くじら立てないことにしている。

邦題を付けている映画配給会社の目的は、その映画のターゲット層に見に来てもらうことであって、正しく翻訳することではないし、詐欺まがいの嘘はいただけないが、この程度は許容範囲だと思うのだが…

実際サッカーが大好きでデヴィッド・ベッカムがアイドルという女の子が主人公の青春ストーリーなのだから。

忠実に訳すなら「ベッカムのように曲げて」といったところだろうが、そのタイトルでターゲットの10代・20代の女性が見にくるだろうか?
逆にベッカムに憧れるサッカー少年たちが勘違いして見に行って憤慨しそう(^^)。

実はこの原題、ベッカムのようなフリーキックを蹴りたいという表向きの意味の他にもっと大きなメッセージが隠されている。

この映画はサッカーを題材にしてはいるが、性別や役割に従った生き方を強制する厳しい家庭環境の中で、インド系イギリス人の女の子が、友情、恋に悩みながら、周囲の偏見にもめげずに何とか自分の夢を実現しようとする少女の自立を描いた映画である。

「Bend It Like Beckham」の「It」はボールを指すと同時に、もっと大きな意味が隠されている。それが何を指すかは映画を見れば明らかだ。

彼女はこう言いたかったんじゃないか?
〝曲げてやる! 人生を、運命を、慣習を、環境を〟ベッカムが自分の力で全てを変えて(曲げて)きたように。

この物理的なBendと比喩的なBendのダブルミーニングを的確に表す日本語はないし、Itが指す様々な意味合いは〝それ〟としか言いようがない。

だから〝ベッカムに恋して〟は、案外悪くない邦題だと思っている。


〈あらすじ〉
ロンドン郊外のヒースロー近郊。インドの伝統を重んじる保守的な家庭で暮らす、インド系イギリス人の女の子ジェスは、ベッカムの大ファン。親の目を気にしながらサッカー中継を見たり、公園では男の子にまじってストリート・サッカーをプレーしていた。そんなある日、地元女子サッカーチームのジュールズに見出される。インドの伝統を重んじる母と、人種差別の苦い経験をもつ父の猛反対にあいながらも、本格的にサッカーに取り組むジェス。やがて、彼女のもとにアメリカの大学からスカウトがやって来る…。