シミステツ

キング・オブ・コメディのシミステツのレビュー・感想・評価

キング・オブ・コメディ(1983年製作の映画)
3.8
コメディアン志望でラングフォードのファンであるパプキンが同じくファンのマーシャと手を組み誘拐、替わりにTVショーに出演していく。

キング・オブ・コメディを夢見るパプキン。「なりきり」が本格的だし、ラングフォードへの近づき方が強引で、事務所に電話を何度もして既成事実を作り出演を交渉する。客観性を欠いた妄想がヤバい。偏執的狂気的である一方、努力家でもあるし意志が強い。どこまでが現実でどこからが妄想なのかも見どころの一つ。夢に取り憑かれた男の執念。類似性があるとされる『ジョーカー』との違いは社会的な側面。アーサーの貧困などのハンディキャップは社会的に共感性があるし「代弁的」でもあるし被害者的である。一方のパプキンはいたって私的で恣意的、身勝手(に見える=社会構造的に一握りのスターが牛耳ることで新しい才能が燻って育たないみたいなことはあるだろう)。それでも殺めることはない。努力して才能があっても手に入らないヒエラルキーの悪なようなものへの批判性。成り上がりへ投じる一石。