manami

まわり道のmanamiのレビュー・感想・評価

まわり道(1974年製作の映画)
-
平穏を突き破る音楽の中、見下ろしていた視界が突然スイッチする。そして心が満たされていないのだと一瞬で分からせるためかのような行動に出る青年。心をかき乱される劇的なオープニングね。
何かの「逃げ道」として作家になりたいなんて言ってるようじゃ、もし万が一実現できたとしてもあっと言う間にペンの重さに耐えられなくなるよ。
主人公は「可愛い子には旅をさせよ」理論で追い立てられるように出立。ひと息つく間も無く「旅の恥はかき捨て」と言わんばかりの二人組から八百長的にパラサイトされることとなる。「旅は道連れ世は情け」気質な彼に、ストーカー詩人も含め謎モテキが到来したため、まとまりなく訳もなく謎メンツでそぞろ歩く、ボンの街を。
続々と同行者が増えていくのはオズの魔法使いのようだけど、何も解決されはしない。RPGのパーティっぽくもあるけど、彼らはけして仲間ではない。
長くゆるい上り坂の「いなか道」を散歩する、長くゆるいシーンが、まったくもって盛り上がってはいないながらもクライマックスか。政治、文学、自然、空虚な会話を延々と重ねた彼らが戻ると、そこには孤独に取り憑かれて命の「使い道」を取り戻せなかった彼の姿。
「まわり道」っていうのは、目的地あってこその言葉よね。もしくはある場所に到達して、そこまでの道程を振り返ったときに出るか。どこに辿り着きたいのかも定まらず、もちろんどこにも行き着いていないのだから、逆説的なタイトルだなぁと、一人で山頂に佇む彼を見て思う。

149(1189)
manami

manami