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愛がなんだのmanamiのレビュー・感想・評価

愛がなんだ(2018年製作の映画)
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確か中学生の頃だったろうか、「筆者の知り合いの、とてもモテる女性」についてのエッセイを読んだことがある。歳も若くはなく、性格もあまり可愛げがなく、顔もスタイルもセックスの具合もイマイチ、なのに幅広いタイプの男性から好意を寄せられているという人の話。それこそ「愛がなんだ」か、まだ考えたこともないような子どもながらに、大人とは恋愛感情とはなんてややこしいのだと驚いたものだ。
この作品を観て、じわじわと浮き上がってくるようにそんなことを思い出した。エッセイ後半には、どうしてその女性がそんなにモテるのか筆者なりの考察が書かれていたような記憶はあるが、内容は覚えていない。もしちゃんとそれを覚えて理解して実践していたら、私はもっと恋愛なるものを味わいこなせていたのだろうかという考えもちらりとよぎる。
というわけで、今作は惚れた欲目の話。
惚れた腫れたは当座の内、なんて本人は、本人達は思っていないものね。「宮大工か野球選手か飼育員になった33歳の彼の、隣にいる自分」を思い浮かべちゃうものね。
来る日も来る日も大好きなマモちゃんこと田中守(成田凌)に振り回されるテルコ(岸井ゆきの)、28歳。けなげとか献身的とかそういうレベルじゃないよな。そりゃ確かにマモちゃんも悪い男なんだけど、でも全体的かつ客観的に見ると問題ありなのはテルコの方なんだよなぁ。
マモちゃんのために仕事を犠牲にし続け、挙げ句の果てにクビになっちゃうテルコ。仲原(若葉竜也)の気持ち悪さは指摘するくせに、自分はマモちゃんになりたいと嬉々として語るテルコ。仕事のことなんて分かりもしないくせに会議の内容を尋ねて、超〜イラつきながら敬語で答えられるのを不思議そうに見つめるテルコ。どのテルコにも毎秒毎秒、ため息をつきたくなるような気持ちにさせられる。
葉子(深川麻衣)はよく友達やってられるな。画面の中にいるテルコを見ても「あ〜あ」ってなるだけだけど、実際に友達があんなだったら、私はきっと心底イライラしてしまうよ。マグカップを届けてくれた同僚(穂志もえか)も、もしかしたら若干そういう気持ちだったのかな。塚越すみれ(江口のりこ)のことをライバル視して、勝手に想像してディスりまくりライム、その「ざまあみろ」が最後には自分に突き刺さってくるくだりは、さすがに少しは同情するけれど。
登場人物たちの誰にも感情移入はできないのに、それなのに、彼らが互いに関わることで起こる展開には妙に共感させられてしまうのが、さすが今泉力哉監督の為せる業なのか。

74(1783)
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