サマセット7

ダーティハリー2のサマセット7のレビュー・感想・評価

ダーティハリー2(1973年製作の映画)
3.7
ダーティハリーシリーズ第2作。
監督は「奴らを高く吊るせ!」「続・猿の惑星」のテッド・ポスト。
主演は「許されざる者」「ミリオンダラーベイビー」のクリント・イーストウッド。
脚本は「地獄の黙示録」「コナン・ザグレート」のジョン・ミリアスと「サンダーボルト」「ディア・ハンター」のマイケル・チミノ。

[あらすじ]
サンフランシスコ警察にて、過激な捜査手法で知られるハリー・キャラハン刑事(イーストウッド)は、模範的な主任のブリッグス(ハル・ホルブロック)から睨まれつつ、次々と事件を解決させていく。
そんな中、殺人事件の有力な容疑者でありながら、証拠不十分で無罪となったギャングのボスが銃殺される事件が発生し、その後も同様の司法の網を潜り抜ける者を「征伐」する事件が相次ぐ。ハリーは同僚の警察官チャーリー(ミッチェル・ライアン)に疑いの目を向けるが…。

[情報]
俳優、監督として名高いクリント・イーストウッドの当たり役ハリー・キャラハン刑事を主人公とするダーティハリーシリーズの1973年米公開の第二弾。

シリーズ第1作の「ダーティハリー」は、主演と敵役の強烈なキャラクター、テンポの良いアクションと印象的なバイオレンス、実在の事件を参照した時事性と刑事の職権の限界に関する鋭いテーマ性が合わさって、ヒットした。
今でも刑事アクション映画の金字塔と評価されている名作である。

マカロニウエスタンのヒーローとしてキャリア最初の名声を獲得したクリント・イーストウッドは、何作かの映画出演の後、この当たり役を得て、アクション映画史における地位を確固たるものとした。

第2作である今作は、第1作のヒットを受けて作られた続編である。
監督は第1作のドン・シーゲルからテッド・ポストに変更。このシリーズは5作作られているが、監督は全ての作品で異なっている。意外にもクリント・イーストウッド自身が監督を務めたのは第4作目のみである。
とはいえ、前作から引き継がれる登場人物はハリー・キャラハンただ1人で、続編と言いつつストーリー上の関連もほぼない。

今作の脚本を共作したマイケル・チミノとジョン・ミリアスの曲者2人(関与した作品を参照されたい)は、今作において、犯人である警察官の制服を着た人物は何者か?というミステリー要素と、前作で提起された「司法で裁けぬ真の悪人は、刑事(=ヒーロー)が裁かないといけないのではないか」という命題に、真っ向から挑むテーマ性を導入した。

今作は、ヒットしたシリーズものの定石どおり、前作よりも興収を伸ばした。
他方で、批評面の評価は「名作」とされる前作よりは落としている。これもよくあるパターンだろう。ダーティハリー3以下も概ねこの流れ(売上アップ、評価ダウン)に乗るようである。

[見どころ]
安定のクリント・イーストウッドによるハリー・キャラハン!!!!
セリフ、佇まい、モテ具合、アクション、機転、信念、全てがカッコイイ!!!!
テーマ性も、なるほど、そう来たか、という感じで、前作との比較で興味深い。

[感想]
期待を上回りもしないが、裏切りもしない、安定の続編、という感じ。

前作の敵役であった連続殺人鬼スコーピオがなかなか強烈なキャラクターだったため、それを超えるのは難しい。
そこで今回は、ハリー自身が前作で体現した、真の悪人に守られるべき権利などない、を過激に押し進めた警察内部の過激派が登場。
ハリーと観客の価値観を揺さぶってくる。
この辺りの狙いは、上手い!と思わされた。

この時期の、拳銃を片手にアクションするクリント・イーストウッドのカッコ良さは神がかっている。
今作は、そんな輝けるイーストウッドを、最もカッコイイ形で縦横に見せてくれる。

ミステリー要素もあるものの、今作の本質は刑事アクション。
この点、バイオレンスが前に出ていた前作と比較すると、今作ではアクションに比重をおいていたかな、という印象。
カーチェイスにガンファイトもたっぷり見せるが、最大の見せ場は、銃を失ったハリーが素手で敵と立ち向かわざるを得なくなる一連のシーンか。
より緊迫感が増すとともに、ハリーの機知が試され、面白く観た。

全体として、さすがに強烈だった前作ほどではないものの、健闘した続編、という感じか。
相対的に、前作は名作だったなあ。スコア上げてもいいかも。

[テーマ考]
今作は、法が裁かない真の悪人は、本当に、刑事が手続きを経ずにぶっ殺してしまっていいんですかい??というテーマを有する。
これは、法が裁かない悪に対峙する正義、という前作のテーマと表裏の関係をなす。
まさしく、続編に相応しいテーマであろう。

今作の敵は警察内部こ過激派であり、まさしく法で裁けぬ悪人を誅殺する。
果たして、彼らはハリーと本質的に変わりない、のであろうか?
作中で犯人は、まさにハリーにそう問うのだが、ハリーの回答やいかに!?

ハリーがどこで線を引くのか、作中で明言はされないが、ハリーがあくまで「刑事」である、という点に答えがあるように思える。
そう考えると、前作ラストの問いも、意味を持ってくるように思う。

それにしても、クリント・イーストウッドの魅力の正体は何だろうか。
長身に姿勢の良さ、もあるだろうが、苦味走った表情と特徴的な喋り方が、カッコイイんだよな。

前作同様、女性の描き方は薄っぺらく、70年代なり。時代を感じる。

[まとめ]
クリント・イーストウッドの当たり役シリーズの第二弾にして、前作のテーマに批評的に挑んだ意欲作。

今作のハリーは女性にモテモテで、一度ならずよくわからないタイミングで「あなたと寝たいの」とか言われる。なんなの?変なフェロモン出てるの?
実際のクリント・イーストウッドもハリー同様モテ男であり、6人の女性との間に、8人の子供がいて、2度結婚し、2度とも離婚している、というのは有名な話。
とすると今作の描写も非現実的とばかりは言えないのかもしれない。イーストウッドなら仕方ない、のか?