りょう

椿三十郎のりょうのレビュー・感想・評価

椿三十郎(1962年製作の映画)
4.8
 前年の「用心棒」からもエンタメの要素が倍増で、こんなに面白い作品とは思いませんでした。とにかく椿三十郎の言動が魅力的なヒーローそのもので、ちょっとふざけた素振りも含めて、このキャラクターが2作目で封印されてしまったことが残念でなりません。
 物語は少しだけ複雑ですが、冒頭から本題のくだりと主人公の活躍で惹きこまれます。かったるそうにしながらも、椿三十郎の策士としての発想がことごとく的中し、ちょっと浅はかな若侍9人を導く展開が爽快です。仲代達矢さんが演じた室戸半兵衛の役柄も、大目付に忠誠を誓っているようでもなく、サムライとしてのプライドを重視する姿勢がいいです。
 椿三十郎が若侍9人のもとを去っていくエンディングでも秀作でしたが、さらに最後の室戸半兵衛との対決シーンが秀逸です。ほとんど静止画のような長い沈黙とこんな至近距離でまさかの居合術が…。椿三十郎の逆手の抜刀のスピードが凄まじく、それと同時に大量の血しぶきに唖然とします。日本の映画史に残る名場面でしょうが、いままで観ていなかったことを後悔しました。
 三船敏郎さんが演じた椿三十郎は、永遠のカリスマです。しばらく彼ほどの魅力的なキャラクターに出会える予感がありません。
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