ブラウンソースハンバーグ師匠

アレックスのブラウンソースハンバーグ師匠のレビュー・感想・評価

アレックス(2002年製作の映画)
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目黒シネマで鑑賞しました。

以前から、すごい嫌な監督の嫌な作品、という認識はあったものの、怖いもの観たさで鑑賞。

お馴染みのひねくれエンドロール始まり。無音のまましばらく観ていると、あれ、クレジットの様子がおかしい、なんか段々ずれてない?あれ、あれあれあれ……

バー!
バー!
バー!
バー!

急に、この映画を選んだことを後悔させてやるサウンドが流れました。

ドン!
ドン!
ドン!
ドン!
ドン!
ドン!
ドン!

「あ、まずいかも」と思ったときには時すでに遅しばかりか全てを破壊しており、私は真ん中の席を選んでしまったので、容易に退出も出来ない状況。

誰の言うことも聞かずに独走しまくるカメラワークと、笑いのセオリーである天丼をも超越した消火器タコ殴りシーンで(生々しい殴打の音と、せっかくの才能をいらん方向に使いやがったダフトパンクの片割れに拍手を)、私は冗談抜きで吐きそうでした。脈も明らかに早かったです。
つい目を背けたとき、ちょうど一席空いたところに女性が座っていましたが、瞳孔開いてんじゃねえかってくらいがっつり観ていました。やべえやつだと思いました。

噂のレイプシーンは目を背けることなく、がっつり観ることが出来ました。ちょうど一席空いたところに女性がいましたが、そっちの方向から「うわぁ……」とうめき声が聞こえました。やべえやつだと思われました。
ただ、私が目を背けなかったのは、そういう性癖があるからではなく、監督の底意地の悪さをガッツリキャッチしたからです。
だって、あれだけカメラブン回してたのに、ここだけ定点じゃーん!そんなんないじゃーん!
そういう意図をキャッチした私は、結構意地が悪いので、このシーンだけはしっかり観てやろうと思ったのです。

ここで上手いなと思ったのは、消火器タコ殴りシーンで「もうやめなよ……」と思わせておきながら、この凄惨なレイプシーンで事情がはっきりすると、「少しでも同情するんじゃなかった、しかも人違うんかい」という感情へ誘導させられるという点です。
でも、もうあのシーンには戻れないわけなので、自分の中でやるせない腹立たしさだけが残るという仕掛けです。

山場を越えると、あとは登場人物達の(まだまだ)幸せで濃密な時間が流れていきます。視聴者もまた従来の構成とは逆行する形で情緒が安定していきます。これに関しては、なかなか不思議な映画体験でした。

映像表現は過剰でありながら、時間の不可逆性を表現する熱意は(何かを犠牲にしてでも)あるので、私はこの監督をほっとくことが出来ません。