流離

山桜の流離のレビュー・感想・評価

山桜(2008年製作の映画)
4.2
心の奥で・・・

観にいってよかったなぁと思った作品。雪国らしい冷たく辛い景色、その後に来る春もぼんやりとした淡い景色でしたが、逆に心に深く残りました。

東山紀之さん、素敵です。初めてじっくり演技するのを観ましたが、はまっていました。殺陣もきりりと引き締まって、所作もすばらしかったと思います。端然と裁きを待つ姿、涙ものでした。丁重な扱いを受けている(髪も髭も伸びていないというのはそういうことかと)ことからも、彼の人となり、弥一郎の行動がどのように受け止められているかが伝わる気がします。東山さんがこの年齢でできる藤沢作品の映画を、ぜひ撮ってもらいたい、山本周五郎でもいいから、そう思ってしまいました。「今はお幸せか」なんて、あんな素敵な目をして言われたら「いいえ」なんて言えないじゃないですか。
田中麗奈さんもよかったですが、話し方が忙しすぎるのと、着物を着たときの歩き方がギクシャクしていたのが気になりました。表情がいいな~と思いました。

脇を固めた3人の母、それぞれに子を守る母ですが、いい配役でした。檀ふみさん、昔はもう少しとがった印象があったのですが、柔らかで温かいお母さんでした。 富司純子さんもすばらしいです。檀ふみさんや田中麗奈さんの半襟が白くシュッとしているのに対して、富司さんのは、ねず色でちょっとほころびがあったように見えました。その半襟と表情で、子を信じ耐えて待つ母親の姿が感じられて泣けました。手塚の紋が桜だったり、野江の着物が花びらの模様だったり、そんな細かいところのこだわりが嬉しかったです。

ラストの歌ですが…映画に集中していて、歌詞まで聞いていませんでした。逆に少々うるさかったかな。せめてエンドロールになってから流してほしかったなぁと思いました。映画館を出てからしばらく、誰とも話したくない気持ちにとらわれました。心の奥底で幸せを願いたい相手のいることの幸せ。
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