アラシサン弐

生きものの記録のアラシサン弐のレビュー・感想・評価

生きものの記録(1955年製作の映画)
4.2
行き過ぎた不安と心配に飲み込まれてしまった老人と、巻き込まれる周囲の人々を描く。
水爆の恐ろしさを直接的な描写ではなく、「水爆が恐すぎて正気でなくなる人」を見せることで伝えるという秀逸な作品だと思う。

水爆という誰しもが普遍的に恐怖を抱くものが原因だからこそ、誰しもがこの老人のようになる可能性がある。

コロナ禍でも大勢いたであろう、間違った恐がり方で暴走して破滅してしまった人。きっとそれに近いのだと思った。

大部分の人だって、別に恐怖を感じていない訳ではないことが描かれているのも良かった。誰でも分かる恐怖の対象があったとしても、ブラジルに逃げるとか地下を掘るとか、生活を大きく変えるようなことはしない。「恐いけどどうしようもないし」を抱えて大多数の人は生きていく。
劇中でもあった台詞、「狂っているのはあの老人か、それとも恐怖を分かっていながら正気でいられる我々か」
このコロナ後の世界にもきっと通ずる。
アラシサン弐

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