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未知への飛行のohassyのレビュー・感想・評価

未知への飛行(1964年製作の映画)
4.3
1964年のアメリカモノクロ映画。

「12人の怒れる男」「セルピコ」「狼たちの午後」など、社会派サスペンスの巨匠が描く冷戦の行末。
同時期に製作された、同じく核の保有による駆け引きを描く「博士の異常な愛情」の派手さに隠れてしまっているが、本作もまた緊張感と驚きに満ちた名作だ。

物語のほとんどが軍司令室とレーダー画面、ソ連の書記長とホットラインがつながっているホワイトハウス内の小部屋で構成される本当に変化に乏しい作品だけれど、最後まで張り詰めた緊張感の中で目を離せないスリリングな展開を見せる。
現代の技術には比べ用もないけれど、この時代はすでに軍も機械化・コンピューター化が進み、人の力がだんだんと及ばなくなる不安感を孕んでいる。

そんな描写から、まさにコンピューターの故障によりロシアへの核攻撃が命じられてしまい、さてどうする…!
こう書くとなんだかありきたりな感じがしてしまうけれど、限られたシーンで緊張感とリアリティを保ち、大統領をはじめとする人間の葛藤・決断をドラマチックに描く本作は、機会があったらぜひ鑑賞したい映画だと思う。

それにしても、鑑賞した人とでないと語りにくいことこの上なし。
ヘンリー・フォンダ扮する大統領が下す驚くべき決断。
そのあまりに有無を言わせない圧力と覚悟を前に、何か反論を展開することができるだろうか。
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