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アウトローのmasayaanのレビュー・感想・評価

アウトロー(1976年製作の映画)
4.0
西部劇における勧善懲悪とは、「町の住民に見捨てられた孤立無援の保安官が、4人の外道をなりふり構わずぶっ放して名誉を回復する」などという醜悪なものであってはならない。「正義なんてないし、お互いに法は破ってるけど、真実的に正しいのは(=天から見てる人が肩を持つのは)俺だぜ」というのが基本姿勢だ。これは、東映の任侠映画という大動脈を通じて、集英社の大ヒット・コミック『ONE PIECE』に注がれている極めて古典的な美学でもある。

この、いかにも西部劇らしい復讐劇を基本的なストーリー・ラインに持つ『アウトロー』が、135分という、人によっては冗長さを覚える尺になっているのは、イーストウッドが演ずる孤立無援の男が、複数の追っ手に取り囲まれてもなお、相手が先に「抜く」のを待っているからだ。とは言え、ぶっちゃけ、それだけならば見ようが見まいがどうでもよろしい映画であり、実際、バトル・シーンは「どっちが勝ったか」という結果だけ分かれば足りてしまうレベルのものが多い。

男の旅路は、しかし、息子がわりの道連れを失う中盤以降、少しずつその表情を変えていく。旅の先々で、成り行きで助けたに過ぎない人々(年老いたインディアンの男、おしゃべりなインディアンの女、神の導きを信じる老婆、そしてその孫娘)と不思議な共同体を形成しながら、荒野の果てで安息の地へとたどり着くのだ。そこで男だけは、復讐を忘れることを自分に許さないが、何かが成し遂げられた手応えがある。正義も勝利も終わりもない戦いの果てに、辛うじて名誉を回復する人間たちを描いたシヴィル・ウォー・ウェスタンの佳作。
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