Omizu

ロード・トゥ・パーディションのOmizuのレビュー・感想・評価

4.0
【第75回アカデミー賞 撮影賞受賞】
『アメリカン・ビューティー』サム・メンデスがマックス・アラン・コリンズのグラフィック・ノベルを映画化した作品。アカデミー賞では助演男優賞(ポール・ニューマン)など全6部門にノミネートされ、撮影賞を受賞した。キネマ旬報外国映画ベストテンでは第1位に選出された。

さすがサム・メンデス。叙情あふれる父子の物語に仕上げていた。マフィアものでありながらアクションに頼らない姿勢に好感を持った。

もちろんアクションに特化した映画はそれはそれでいいんだけど、本作はあくまで家族の物語として描いていてよかった。

一種のロード・ムービーになっており、愛情表現が乏しい父と多感な息子とがマフィアから逃げる過程で絆を育んでいく。父マイクと子マイケル、二人がお互い愛を求めているという関係性が尊い。だんだんと本当の父子になっていく過程が詩的に描かれている。

撮影賞を受賞しただけあり印象的なシーンが多々。ジャケットにもなっている雨の中での銃撃戦、ガラスを介した遭遇シーンなど全編通して非常に美しい。計算され尽くした撮影が実に見事。

キャストも今考えると信じられないくらい豪華。ポール・ニューマン、トム・ハンクス、ジュード・ロウ、ダニエル・クレイグ、ジェニファー・ジェイソン・リーという面々。それぞれが違った魅力をみせていた。

そんな豪華キャストを見事に束ねて見せたサム・メンデスの手腕、恐るべし。キャストの演技は素晴らしいが、それに頼らない作劇をしていて唸った。

サム・メンデスに今まで作家性を感じたことはなかったが、本作を観るとよく分かる。人間の感情を重視した叙情性、これがサム・メンデスだ。どのカットも計算され尽くしていて素晴らしい。撮影のお陰もあるがサム・メンデス自身で完全に画が見えているのだろう。そのヴィジョンの確かさを感じられる。

サム・メンデスの中では知名度が低いタイプの作品かもしれないが、よく作家性が出た傑作だと思う。今のところハズレがない。アカデミー作品賞にあがらなかったのが謎すぎる素晴らしい作品だった。
Omizu

Omizu