Omizu

エレメント・オブ・クライムのOmizuのレビュー・感想・評価

3.8
【第37回カンヌ映画祭 コンペティション部門出品】
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』ラース・フォン・トリアー監督作品。カンヌ映画祭コンペに出品され技術大賞を受賞、デンマークのアカデミー賞であるロバート賞では作品賞など7冠に輝いた。

フォン・トリアー監督の長編デビュー作。少女バラバラ殺人事件を捜査する刑事が、入り込むあまり抜け出せなくなっていく様を描いている。

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』『奇跡の海』など胸クソ映画でお馴染みフォン・トリアー監督であるが、本作はそういう感じではなかった。胸クソというよりは、これの延長線上に『キングダム』があるのかなという不思議系の難解映画だった。

フォン・トリアー作品は一本一本が重すぎて体力がいる。その印象は本作でも感じた。ただ、ひたすらに辛い展開が続く『奇跡の海』などとは違う重さがある。

従来の映画にはないであろう斬新なカメラワークが見事。ガラスを割るシーンが印象的だった。感じたことのない闇に取り憑かれていくようなストーリー展開に心が重くなる。

ジャンルで言えば刑事サスペンスになるんだろうが、ジャンル映画では全くない。演者や展開はあくまで装置であり、社会の闇をこそ描きたいのであろうフォン・トリアーの手腕は凄まじい。

犯罪者を追う立場のはずがいつの間にか犯罪者と同化していく。それも分かりやすい手法ではなくかなり難解な手法を使って。同僚だった署長、犯罪心理学者の恩師はまるで『キングダム』の院長のよう。ユニークで不気味な存在感を醸し出している。

さすがラース・フォン・トリアーと言うしかない怪作。WOWOWにあるういに全部観てしまいたいのだが気が重い…
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