バナバナ

上海の伯爵夫人のバナバナのレビュー・感想・評価

上海の伯爵夫人(2005年製作の映画)
4.0
タイトルと、真田広之が出ているというのに惹かれて、観てみました。

私は森川久美さんの漫画が大好きなんですが、昔世界の第一線で活躍していた盲目の元外交官、美貌の亡命ロシア人貴族の未亡人、謎の日本人、流浪のユダヤ人と、当時の「魔都、上海」に必要なキャラクターが出るわ、出るわ。
真面目に歴史が好きな方には不謹慎ですが、もう、溜りませんでした(爆)。
(でも中国人は、レイフ・ファインズの執事も薄情だったし、キャラ薄かったな)

元ロシア大貴族の嫁姑関係が、すんごく日本っぽいと思ったら、脚本書いたのがカズオ・イシグロという日本人作家だと作品TOPのストーリー紹介で読んで、妙に納得してしまいました(笑)。
脚本のみということですが、もし原作の小説があれば、レイフ・ファインズや真田広之の背景を知りたいので、読みたかったのに(残念)!

この映画は、日中戦争そのもの(戦争の経緯など)は描かれてません。結局は、ラブロマンス物です。
だから、真田広之のスタンスも不明のまま。石原莞爾みたいな壮大な理想があったのか、ただの軍部の犬だったから、自分もレイフの夢にイッチョ噛みしたかったのかなどは、分からず仕舞いです。
ですが、日中戦争直前の「上海」に憧れがある私としては、この雰囲気に浸り、最後は号泣し、とことんこの映画の世界を堪能することが出来たのできました。
しかし、若い人が本作を観ると「なんのこっちゃ分からん」「思わせぶりなだけ」と思われてしまうかもしれません。

私だって、この時代のことは歴史の授業ではほとんど習ったことはなく、「虹色のトロツキー」とか「南京路は花吹雪」とか、漫画でなんとなく当時の世相を知っている程度なので、
今の、高校で世界史の授業を全く受けていない世代や、ロシアが以前はソビエト社会主義共和国という国名で、そもそもロシア革命の時にロシアの貴族やユダヤ人は追い出されちゃったんだよ、といったことを知らない世代がこの映画を観た時、ちゃんと登場人物たちの刹那感、絶望感を理解できるのか、ということが気になります。
というのも「クライマーズ・ハイ」のレビューを見ると、「台詞の意味が分からなかったので乗れなかった」とか、「事故そのものの映画にして欲しかった」など、これは共通の認識不足からくる感想では?、と思えるものが多々見受けられたので。

個々に感想があるのは当たり前なのですが、やはりベースになる共通認識がないと、「ある一定の部分までの理解」を得るのも難しいのかな?、と思ってしまったからです。
まあ私の様に“魔都上海”に魅力を感じている人間は、楽しく観られる作品だと思います。
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