てつこてつ

気まぐれな唇のてつこてつのレビュー・感想・評価

気まぐれな唇(2002年製作の映画)
3.2
比較的初期の作品でありながらも、やはり、安定のホン・サンス節が炸裂。2002年アジア太平洋映画祭監督賞受賞作品。

とりたてて盛り上がる展開もなく、登場人物が交わす台詞もごくごく日常的な内容でありながらも若い男女の心の機微を淡々と、もしくはダラダラと描く作風なので、良くも悪くも強いメッセージ性を作品に込めるキム・ギドク監督同様、韓国映画ファンの方々にも好き嫌いはハッキリと分かれると思う。

自分も一番最初に見たのは「アバンチュールはパリで」だったので、???となったが、その後の作品を見ているうちに、噛めば噛むほど味が出るという一種スルメのようなテイストで、それなりにクセになる。

この2002年制作作品の主人公は売れない若手俳優。彼が自分の出番が突然無くなった作品のロケ地から帰宅するまで、ちょこちょこと寄り道をしながら、出会った女性たちと刹那的な肉体関係を結ぶという、ロードムービースタイルのアバンチュール物。リアリティ溢れる男女の会話も楽しいし、外国人が訪ねるような有名な観光地などではなく、韓国国民が気軽に出かけるのであろう行楽地の地方ロケがなかなか風光明媚。登場人物たちが街の食堂で食事をするシーンの韓国式豚バラ焼肉だったり、鶏粥なんかも美味しそう。

作品のストーリー上、ベッドシーンも数回登場するが、描写はあっさりめなので見やすい。

驚いたのが、この主人公の俳優を演じていたのが若かりし日のキム・サンギョン。「パラサイト」で世界中に名を知られたイ・ソンギュンも、一時期、ホン・サンス監督作品の常連であったが、この監督はキャスティングもいいね。

ただ、この内容で115分引っ張るのは、さすがに長いかな。
てつこてつ

てつこてつ