いやー、とっ散らかってるなぁ。
いろいろ詰め込もうとし過ぎて全体としても細部においても乱調子で破綻している。カオスな怪作、と一言で片付けてしまえるくらいの〜当時の邦画としても川島雄三作品としても凡庸な〜出来だが、ツッコミどころの多さもあいまって変に頭から離れず、変に愛おしい。
バラエティ豊かなキャストをほとんど活かしきれていない。川島初のカラー作品ということで色を使った演出も見られたがやや勇み足で上滑り。コミカルさを狙った早送りなどもしかり。グラマ島から還って来たあとのパートが長く間延びしているし、そこで繰り広げられる戦争批判や天皇制批判(盛り込んだ気概は川島“らしい”といえばらしいが)も作品のバランスを崩し、今の視点から観ると余計に時代を感じてしまう。
これらの大きい瑕疵が、結果としてこの作品の「歪んだ魅力」にほぼ直結しているのがなんとも面白いところだが。
監督本人はクランクイン前に今作を「南方版幕末太陽傳」と表現したらしい。撮り終えた後もそう認識していたかは知らぬが、どこがだ?と首をかしげる部分と、うーんそう言われれば・・となんとなく納得する部分が混在しているように思える。
個人的には(やや安易かもしれぬが)「マタンゴ」を想起してしまった。言うなれば「マタンゴ(remix ver.)といったところか。