櫻イミト

制服の処女の櫻イミトのレビュー・感想・評価

制服の処女(1931年製作の映画)
3.5
キネマ旬報ベストテン第1位。同性愛要素を内包した最初期の映画として有名なカルト作。監督とキャストは全員女性。ナチス支配直前のドイツ映画。原題は「Mädchen in Uniform(制服の乙女)」。

母を失った14歳のマヌエラは厳格なカトリック女子寄宿舎に送られた。悲しみと不安でいっぱいのマヌエラの心に光を灯したのは凛として理解ある女教師ベルンブルクの存在だったが。。。

1960年代の“若者の反抗”を先取りした一本だった。体制維持や宗教的教義よりも人間の自然な感情に重く“自由への意志”が貫かれている。時代背景を考えると反ファシズムの主張も込められているようにも思う。公開の2年後にドイツはナチス支配となり本作は上映禁止に。ユダヤ人のサガン監督とマヌエラを主演したヘルタ・ティーレは亡命した(ベルンブルグ先生役のドロテア・ヴィークはナチス体制下で女優を続けた)。本作の生徒役たちの多くは収容所に入れられて亡くなったとの事。

権威主義的な校長は敵役となるが、その描かれ方は絶対悪ではなく少し悲哀も感じた。現代の学級崩壊や若者のバカ騒ぎを考えると最低限の管理は必要だとも思う。そんな風に考えてしまうのは自分が若者ではなくなった故だろうか?

終盤への布石として、学校の高さを階段での生徒の雑談で示しているのが上手い。カルト的な側面と同時に、映像・演出・シナリオとも非常に安定した初期トーキーの秀作。
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