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ボビーに首ったけのtomひでのレビュー・感想・評価

ボビーに首ったけ(1985年製作の映画)
4.0
上映時間44分、とてもシンプルな内容。バイク好きの高校生の夏の日の一瞬を描いたアニメ作品。大きなドラマ展開は一切ない。久しぶりに観直したが、昔と変わらずとても好きな映画だった。なんか嬉しい。

誰もが若い時に感じる、やりたい事が見つからないもどかしさ、時間を持て余す感じ、道筋が決まっていない不安定さ、その危うさの中にある苦しさと楽しさ…。作画枚数も少ない紙芝居のようなスカスカなこのアニメ作品にはそんな空気感が絶妙なバランスで入り込んでいる。

映画後半、主人公がバイクで走るシーンがめちゃくちゃカッコイイ。前半の紙芝居のような画づくりから急に作画枚数が増えて、バイクで走る疾走感、道路脇の木々が歪んで後にぶっ飛んでいく感じ、風景と一緒に夏の光が流れていく感じ、手描きで表現されるその動きの画力にやられる。カラーセル画からモノクロ鉛筆の手書きに変化していく感じとか本当にアート。

携帯電話がない時代のうまくつながり合えないもどかしさや切なさも久しぶりに感じた。今の若い人には分からないと思う。野村宏伸の棒読みセリフも何故か好き(笑)

「なんて素敵なんでしょう、字が声になるなんて」
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