tomひで

オッペンハイマーのtomひでのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0
原爆を作った物理学の天才、オッペンハイマーの人生を描いたクリストファーノーラン監督の最新作をようやく鑑賞。180分の会話劇、理論物理学の専門的な話もあり、この映画の深度に全く追いつけていない自分にも気づいているが(笑)めちゃくちゃ見応えがあった。

音楽家が楽譜だけを見て音楽を聞く事が出来るように、物理学者は数式を見てそれを感じる事が出来るんだな。映画前半、ベットに横たわって原子構造を思い描くシーンがあるが、凡人には解らない物理学の天才の世界の捉え方を感じられて面白い。そしてこの原子構造のカットはCG使ってないんだ…。ノーランの簡単にCGで処理しようとしない姿勢がめちゃくちゃ好き(笑)そして若きオッペンハイマーは実験が苦手だったとは…そんな人が人類初の大実験に成功するんだな…。

映画的にはこのトリニティ実験あたりから、ノーランの演出にグイグイ引き込まれる。実験後の喜ぶ観衆と被爆した人が重なり合っていくような表現、凄いな。こんな演出が出来るんだな…。トルーマン大統領とのシーンも印象的。そして人間の闇…。映画ファンなら沢山観てきたと思うが、赤狩りが入っている映画って後味が本当に悪い。時代的に避けては通れないが…。

この映画の米公開が2023年7月、世界の中で日本だけが8ヶ月も経ってからの2024年3月末公開。この映画の公開を延々しなかった配給会社の配慮?思惑?が全く意味不明。この映画こそ日本の8月に合わせて公開されるべきだと思った。

「権力は影に留まる」
tomひで

tomひで