Jimmy

暖簾のJimmyのレビュー・感想・評価

暖簾(1958年製作の映画)
4.0
原作は山崎豊子のデビュー小説であり、山崎豊子の生家の昆布屋をモデルにした親子二代の商人を主人公にしたドラマ。監督は川島雄三。
主役は商人夫婦を演じた森繁久彌と山田五十鈴ということになるのだろうが、先代夫婦の中村鴈治郎と浪花千栄子がとてもイイ味を出している。個人的には、ズル賢さを演じさせたらピカイチの中村鴈治郎、金に絡むエゲツない話をさせたら右に出る役者は少ない(杉村春子ぐらい)の浪花千栄子の存在感が素晴らしかったと思う。

物語は、大阪の昆布屋が舞台。この店の主人(中村鴈治郎)に付いて来て「奉公させてほしい!」と頼む少年。この少年が暖簾をくぐる時に「暖簾をくぐる時はお辞儀をして、丁寧にくぐるように!」と主人から言われるあたりが印象的。
その子供が一生懸命に働いて大人になり、この店の暖簾分けを受ける。これが森繁久彌。
森繁久彌は幼馴なじみの乙羽信子と結婚したかったが、主人の命により山田五十鈴と夫婦になる。そして、台風被害を受けたりしながらも、たくましく商人として生きていく。
世界第二次大戦、戦後の頑張り、自分の子供(森繁久彌(二役))との意見ぶつけ合いなどが描かれていく。

ある男(主人公)の一生を描くドラマは、山崎豊子の得意とする分野だが、デビュー作から続いている。
そうしたドラマでない京マチ子・若尾文子・中村鴈治郎など出演の『女系家族』が山崎豊子原作映画としては大好きだが、『白い巨塔』・『華麗なる一族』・『不毛地帯』・『女の勲章』・『ぼんち』なども好きな映画。

このDVDの特典映像として、撮影監督が残していた「映画『暖簾』撮影風景映像」(無音)ではカラー映像でありし日の川島雄三監督の姿を見られる。

川島雄三監督のセンスが光る佳作であった。
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