Hiro

イリュージョニストのHiroのレビュー・感想・評価

イリュージョニスト(2010年製作の映画)
4.3
「イリュージョニスト」
最初から最後まで切ない。彼が何を思って手品師をしていたのかはラストシーンにある気がします。あの思いが全てなのでは。

時代遅れの手品師がある1人の貧しい少女と出会う。彼らはエジンバラの貧しい宿で生活していくが、時代はどうしようもなく移り変わっていく。そして彼らも。

幻想的なまでに美しい街の風景。それに対して現実はあまりにも残酷で。絵本のような、お伽噺のような世界観ではあるものの、それでも「魔法はない」と突きつけられている感じがしました。

変わっていく現実の中で、人生を、夢を諦めてしまう人たち。何がきっかけで立ち直るかはわからないし、立ち直れないことだってある。そんな中で、彼の最後の去り際というのはあくまでも手品師らしくて、最高でした。自分がいなくなる、というのがアリスに残した最後の手品なのかもしれない。

アリス、色々と我儘すぎないかと思ったこともありましたが、よく考えてみたら、幼い頃の私だって親にとってはこんな存在だったのかもしれない。欲しいと言えば買ってくれたし、サンタにだってなってくれた。それは自分にとっての魔法使いを演じていてくれたのかもしれないし。そう考えると、アリスは昔の私でもあるのかも。

終始音楽がないのもよかったですが、何よりアリスの言葉が翻訳されないのが凄く良かった。彼らの繋がりの脆さというか、伝わらないもどかしさみたいなものも一緒に体感できた気がして。

「愛」とは何だろうと思いました。与え続け、見返りを求めず、自分の手から巣立っていったら追いかけはしない。愛とは意志ではなく行動なのかもしれない。
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