浅草のストリップ劇場で発生する殺人事件という、監督ならではの煽情的な設定にワクワク。
中国雑技団並みに柔軟なフランス座の現役ダンサーらを起用したダンス場面も、要所に登場する。
グラマラスな肢体を活かす三原葉子は、冒頭から吹き替えなしのダンスを披露。
天井より吊られたクリアボックスの中で繰り広げる演目場面もあり、カメラは上方から下方から、幻想的な媚態をダイナミックに捉える。
また天地茂が三ツ矢歌子をしごくレッスン場面では、サイケな編集術も登場…、この時代には珍しくがっしりとした体躯の宇津井健は、爽やかな印象を振りまく。
かようにフレッシュな新東宝スターが揃うほか、『第三の男』か『夜歩く男』ばりの下水道チェイス場面も。
脚本がやや偶然に頼り過ぎるきらいはあるが、盛りだくさんで期待に違わぬ一本だった。
直接的な言及はないものの、悪の根城である精肉場は、真犯人の猟奇的な嗜好を匂わせているようで怖い。

相変わらず僕の心をザワめかせるヤング宇津井健。殺人事件の真相を追う熱血ブンヤを演じているが、無実の罪で連行された容疑者の妹・三ツ矢歌子に対して最初から下心丸出しにしか見えないのは僕の目が濁っているからだろうか。そして天知茂はいかにも怪しげに登場しておいて事件の顛末にはほとんど絡まないという、その存在感を逆手に取ったミスリード。しかし本作のハイライトはなんといってもアマチの熱血ダンスレッスンシーンなのである。「ワン！ツー！スリー！フォー！ダウン アップ！ダウン アップ！」あの顔とリズミカルな掛け声が細かいカッティングでしつこく迫ってくるからトランス状態になりそう。そして踊らされて疲れた歌子を強姦しようとする極悪卑劣ぶり。「君は狂ってる」「狂ってるのは世の中のほうだ」レスキューに来た宇津井の説教とそれに返すアマチーのストーリーにまるで関係ない突飛なやり取りも味わい深い。

アクションとお色気というこの時代の映画の王道をいく娯楽作品の佳作。
フィルムノワールあるいはドイツ表現主義を意識したような石井輝男監督の意欲的な挑戦が強く感じられる！　特に、悪党（天知茂）がダンサーに迫る際のカメラワークや意識が朦朧としていくダンサーの表現がスタイリッシュ！　クライマックスの下水道のシーンは「第三の男」を意識しているのかなぁ？　昭和30年頃の浅草やその周辺が出てくるのも楽しみ。船の行商がこの作品ではユニークなトリックとして使われているけど、当時はこんな商売が本当にあったのかなぁ？　おばけ煙突が目立っていますねぇ（笑）　とりわけ新聞記者の西村（宇津井健）が殺された船の行商の妻と子供が暮らすアパートを訪ねると、ガラスの向こうにおばけ煙突が見えるシーンは、この作品で一番素晴らしい場面のひとつだと思う。
ところで、かおるというダンサー役で出演している若き三ツ矢歌子さんが美しい！！