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人間のTSのレビュー・感想・評価

人間(1962年製作の映画)
4.0
【人間を人間たらしめるもの】84点
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監督:新藤兼人
製作国:日本
ジャンル:ドラマ
収録時間:116分
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途轍もなくシンプルな題名だからか、凄い心にくるものがあります。窮地に陥った人間は果たして人間であり続けれるのか。人間以外の存在、例えば畜生に成り下がってしまわないのか。白黒でもここまでエネルギッシュな映像が伝わってきたのは『生きる』以来かもしれません。白黒映像がカラー映像を上回ると思われる作品の一つです。

ある日小さな荷役船である海神丸は、東九州の漁村を出発した。そこには4人の人間が乗船していて、1泊2日で帰路につくつもりだったのだが。。

途中で嵐に襲われ漂流してしまい、何十日にもわたり小さな船の上で生き残らないといけないというもの。ありきたりの設定かもしれませんが描き方が非常に良い。雨が降らないと本当に生き延びられないという過酷な状況を見事に描いていますし、極限までに至った人間は、人間の太ももでさえ美味しそうに見えてくる。どれだけ頭脳が発達した人間でも、何もない箱に収められたら所詮赤子。下手をすると他の生き物の方が生存確率は高いのかもしれません。

4人とも素晴らしい演技をしていますが、特に五郎助を演じる乙羽信子の表情がえぐかった。演技とはいえ、どうすればあのような目力を出せるのでしょうか。切り取ればホラー映画とさえ思えてくるこの作品は、人間の弱さ、そして人間も結局は食物連鎖の頂点などに君臨する生き物ではないということを如実に伝えています。結局、人間を人間たらしめるものとは、良き環境なのだと思いました。劣悪な環境ならば人間は畜生にもなり得るということです。しかし、ラストには驚愕させられましたし、ある事をすることで人間は人間であり続けれるのだとも思いました。そのある事とは、ラストを見ればわかるでしょう。
同時に新藤兼人の名作『鬼婆』も気になりました。前から気にはなっていましたが今作を見てさらに際立ちました。
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