真鍋新一

続決着(おとしまえ)の真鍋新一のレビュー・感想・評価

続決着(おとしまえ)(1968年製作の映画)
3.7
前作で兄貴と親分が死んでいるので、一体どうやって続きを作るのかと思ったらなんのことはない。何事もなかったかのように転生しており、すべての設定がリセットされていた。「続」とは……???

前作もアホみたいにテンポが良く観やすかったが、今回はさらにギャグが多く、極限まで寄り道をして話をガタガタにする石井輝男イズムが爆発しているので、こちらのほうが面白いと言う人が多いのも頷ける。

本筋に関係ないはずのコントが話を円滑に進めていくのは『網走番外地』シリーズと同じ。由利徹と砂塚秀夫の網走メンバーが吉田輝雄と一緒になって田崎潤を追い詰める場面は、基本は硬派なキャラの吉田輝雄も大いにノリノリでコントに参加していて微笑ましい。

由利徹は悪いヤクザにタバコの煙を吹きかけられて、それを鼻で吸い込んで吹き返すという離れ業をやっていた。しょーもないシーンだが芸人の凄みが窺える瞬間だった。

おふざけばかりかと思いきや、見応えのある見事なシーンもある。宮園純子演じる死んだ親分の娘が聾唖者で、渡世の義理で親分を殺した吉田輝雄が出所後に彼女を支えるようとするエピソードがそれで、他の任侠ものにありがちなウェットなお涙頂戴設定ともまた違うフラットな目線もある。バランスの悪さでバランスを保つ。これもまた石井輝男ならではだ。

前作にも言えることだが、石井輝男はやくざの世界には興味がなさそうだが、若い義兄弟のBLめいた関係の描写には相当入れ込んでいる。普段はキリッとしている梅宮辰夫がスイッチが入ると少年のような顔で泣き叫んだり、前作、今作ともに谷隼人の境遇がそのトリガーにされていたり、確信犯的なブロマンスだ。

ちなみに、殴り込みのシーンで流れる梅宮辰夫の歌はクレジットがないのでタイトルがわからないが、明らかに「網走番外地」のイミテーションで笑ってしまった。「馬鹿を承知で殴り込み〜」という歌詞も同じ。レコードになっていたら欲しいのだが……。GSファン的にはザ・ジェノバの演奏シーンがあるのがうれしい。ちなみにその直前のシーンでピアノを弾いていたのはおそらく音楽の八木正生(本人)。
真鍋新一

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