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散歩する惑星のohassyのレビュー・感想・評価

散歩する惑星(2000年製作の映画)
3.5
「ミッドサマー」を制作する際にアリ・アスター監督が意識したという、ベルイマン、今村昌平、パク・チャヌクあたりのフィルムメーカーと並んで見かけるのが本作。
広告出身のスウェーデン人監督・ロイ・アンダーソンの、なんともユーモラスな作品だ。

製作年は2000年となっていておそらくは近未来を描いていると思うので、きっと今頃の地球を想像して作られたのではないかと思うけれど、今見ても近未来の地球を描いた作品として全く違和感がない。
突然の解雇から始まり、突然の暴力、マジックショーでの失敗、医者と看護師の不倫、店の火事、ありとあらゆる不条理が、白塗りをした老人たちに降りかかる。
おそらくは、この世界には若い人がほとんどいないのだろう。
後半突然登場し、ミッドサマーの参考にしたであろうとんでもない扱いを受ける女の子を見れば、その想像は容易い。

ワンシーンFIXワンカットで語り切る演出法、画面作りの緻密さ、手前から奥まで全て見通せる構図とパンフォーカスなど、内容と相まって全く古さを感じさせない。

本作含めた3本の、いわゆる「リビングトリロジー」はどれも独特な世界観で面白いのだけれど、全てのストーリー、キャラクター、セリフ、ビジュアルが絶望的にアイロニカルで、映画としての分かりやすさを完全に放棄しているため、見辛さも否めない。
でも、瞬間瞬間が時に笑っちゃうほど面白く、時に感嘆するほど作り込まれていて、次にいったいなにが起こるのか全く予想ができない本作は、なかなか途中離脱をさせてくれず、気づいたらとても奇妙でちょっと爽快な気分で観終えることになる。
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