「ウェルカム・ドール・ハウス」の主人公ドーンの葬式から始まる。観てなくても問題ないです。
妊娠して自殺したドーンのようにはなりたくなくて、たくさん子どもを作りたいと願うアビバの物語。
これが人間の本質でしょ!ってことを、えぐい方法で表現し、剥き出しにして見せてくるトッド・ソロンズ監督。
気持ち悪い部分もあるし、考え方が偏っているのでおすすめはできないけど、私は大好き。
ブラックでもシニカルでも何でもなく、監督はすごく真面目に作ってると思う。ただ表現方法が独特。
この作品、同じ人物を8人が演じます。
しかも、肌の色も年齢も体型もバラバラで、コロコロ人が変わる。
この監督の配役は、見た目のいけてない人を多めに使うので、ふだん画面の中でキレイな人ばかりを見慣れていると違和感を感じます。
「この役者、太ってるな」とか「肌の色が違うな」とか思っている自分に気づく。それって固定観念や差別なんでは?と思い知らされる。
そして、だんだん観ているうちにアビバを誰が演じてもアビバなんだって思えるようになる。
セリフで「13歳でも50歳でも、痩せても、顔を引き締めても、性転換しても、基本的に人は変わらない」というようなことを言っていて妙に納得。
人の2面性についても、描いています。
母は娘を愛しているけど、娘が嫌がるのにお腹の子供をムリに中絶させる。
愛ってなんだ?と突きつける。
家を出たアビバは、中絶反対派の宗教団体のようなところに救われる。
そこは、いろんな子どもたちを受け入れていて、とてもいい人たち。それが、嘘くさくて気味悪い。
アビバが中絶しているとわかると追い出そうとしたり、中絶する医者を殺そうと企む。医者の仮面の下には別の顔がある怖さを描く。
ちょうど最近、アメリカの中絶禁止法のニュースを見たばかりでタイムリーな話だった。
人間て結局、変わろうとしても変われるもんじゃない。人生はそんなに甘くないって言われた作品でした。