シミステツ

善き人のためのソナタのシミステツのネタバレレビュー・内容・結末

善き人のためのソナタ(2006年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

1984年、東西統一前の東ドイツ。反体制疑義への監視をしていたヴィースラー大尉が劇作家・ドライマンの世界に魅了されていく。

圧力をかけられると罪のある者は怒るのではなく泣き、用意された言葉に縋るため一言一句同じことを言うという尋問に関する大学講義まであるのがすごい。

恐怖政治、腐敗…ドイツでは長年タブーとされていたシュタージという監視システムにメスを入れる本作。深く愛し合うはずのふたりを引き裂き、不信を募らせ、分断させていく権力。冷徹な印象のヴィースラーが監視を通して次第に変わっていくさまが印象的。

イェルカの自殺。
彼がドライマンに贈った楽譜「善き人のためのソナタ」
「この曲を本気で聴いた者は、悪人にはなれない」

ヴィースラーはファンを装いクリスタにドライマンの元へ帰るように促したり、西側への脱出計画へ便宜を図るも、それがはからずも盗聴されているという疑念を晴らすものになってしまい、その後シュピーゲル誌に東ドイツの自殺統計をリークする展開へ。黙認するヴィースラー。クリスタはタイプライターの隠し場所について嘘の証言をして自ら車に轢かれて死ぬ。後に監視されていたことを知り報告書を読み漁るドライマンの絶望、そして知るヴィースラーの存在。

2年後ドライマンは『善き人のためのソナタ』を刊行。「感謝をこめて HGW XX7に捧げる」の一節にヴィースラーは救われただろうな。

「ギフト包装は?」
「いや、私のための本だ」