イルーナ

日本列島 いきものたちの物語のイルーナのレビュー・感想・評価

2.0
動物ドキュメンタリー映画は数あれど、「日本列島に生息する動物たち」というテーマは意外となかったので、少し興味があったのですが……

外国の『ディープ・ブルー』や『ライフ いのちをつなぐ物語』のような派手さこそありませんが、やはり日本の自然や四季の風景は息をのむ美しさです。
また、全編を通して“家族愛"という普遍的なテーマが流れているのですが、特に印象的なのが、母親とはぐれたサルの子メダカの受難の物語。
極寒の中、群れの仲間たちに助けを求めるもことごとく拒絶され続け、ついには群れからもはぐれて完全に孤立してしまう。
一人ぼっちのメダカは孤独と寒さに震えながら、ただ黙々と木の皮を食べ続ける……
このサルのエピソードは他の動物たちの話とは一線を画した完成度で、容赦なく追い詰められていくメダカの境遇にすっかり感情移入してしまいました。
実際に、会場のあちこちからすすり泣く音が聞こえてきました……

ですが、残念ながら欠点もかなりあります。
まず、ゴリのナレーション。本作最大の問題点と言っても過言でないです。
他のナレーターも芸能人とはいえ、ドキュメンタリーらしく淡々と落ち着いた語りをしているのですが、ゴリだけやたらハイテンションかつ、
動物(イノシシ)を擬人化したナレーションをしていたのでものすごく浮いていました。あきらかにドキュメンタリーというジャンルと噛み合っていません。
長澤まさみもクマノミのシーンで擬人化ナレーションをしていましたが、こちらはかわいらしさだけでなく、落ち着いた感じでしゃべっていたので、違和感はなかったのですが……
いくら対象年齢を低めに設定しているとはいえ、真実をありのままに伝えることが第一のジャンルで、バラエティ番組のノリを持ちこんでしまったのはマイナス。
それと、物語の展開が急で、「ええっ?!」となる場面も多いです。メダカの母親アンズが行方不明になったいきさつや、イノシシ兄弟の大半が病気にやられて死んだという、本来盛り上がるべき場面の多くがナレーションで済まされ、映像に出てこない。
フィクションとドキュメンタリーは違うとはいえ、やはり引っかかるものがあります。

そして、群れからはぐれたメダカはどうなったんだ、どうなったんだ?と、大画面にかじりついていると……
「結局、群れにメダカの姿はありませんでした」
……散々盛り上げておいてこれ?!と言いたくなるような、まるで打ち切られた連載漫画のような終わり方でした。
一応、「群れからはぐれたサルでもごくまれに生き延びていることがあるので、メダカもきっとどこかで生きているはず」というフォローが入るのですが、「そうだよ、きっと生きてるよね!」と思うよりも「……たぶん死んだんだろうなぁ、かわいそうだけど……」と思った人がほとんどだと思われます。
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