てつこてつ

配達されない三通の手紙のてつこてつのレビュー・感想・評価

配達されない三通の手紙(1979年製作の映画)
3.5
エラリー・クイーンのミステリー小説「災厄の町」の映画化。FODで視聴。

1970年代の邦画の探偵物と言えば、どうしても市川崑監督の横溝正史シリーズばかりが思い浮かんでしまうが、このようなアメリカのミステリー小説の大家の作品を、野村芳太郎監督&進藤兼人脚本というタッグで、シャレオツ映像化していたとは知らなかった。

原作は、「Yの殺人」と並んでクイーンの中ではドラマティックな展開があって好きだけど、この邦画版も、萩市という美しいロケーションに置き換え、ストーリー的にはかなり原作に忠実に、見事に映像化している。

萩市の地方銀行の会長を務める名家。美しい三姉妹と、失踪し突如戻ってきた次女の夫。そして、彼を突然訪ねて来る美しい妹・・。小川眞由美、栗原小巻、神崎愛、松坂慶子が、それぞれ役にハマっている。特に、松坂慶子の熱演は必見。また、作品の中で背中側のフルヌードまで披露しているという、まさに体当たりの演技。そして、美しい。

1979年製作作品なので、女優さんのメイクや、一家が住むお屋敷の内装など、時代を感じさせるものもあるし、姉妹が「○○お姉さま」とか呼び合うのも違和感あるけれど、本当のお嬢様ってのは、こんなものかもしれない。ただ、蟇目良演じる不自然な日本語を使う日系アメリカ人の青年に探偵の役どころを与えたのはいかがなものか?

父親役の佐分利信は、さすがのオーラ。歌舞伎役者の片岡仁左衛門(制作時は片岡孝夫)も、気弱な婿の役をとても丁寧に演じている。検事役の渡瀬恒彦も若い、若い。

原作の三姉妹の名前が、ローラ、ノーラ、パトリシア。この作品では原作に敬意を表してか麗子(れいこ)、紀子(のりこ)と、頭の音読みを何とか次女までは合わせられたものの、さすがにPで始まる日本の女性名はなく、末娘だけは恵子なのだけ惜しい!まさか、ピン子とは付けれないし。

殺人事件の犯人の動機には非常に納得が行くし、原作同様、ドンデン返しがある話の展開は好きなんだけど、末娘と日系アメリカ人青年の探偵ペアが真相にたどり着く過程が、やや大雑把。

それでも、よく出来た推理映画だと思うし、やはり、松坂慶子の熱演ぶりは一見の価値あり。今、連続ドラマや邦画の主演を張っている若い女優さんにこんな役を演じきれる人、いないだろうなあ。
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