むっしゅたいやき

エレンディラのむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

エレンディラ(1983年製作の映画)
3.8
緑色の血。
ルイ・ゲーハ。
原作はガブリエル・ガルシア=マルケスの中編『La increíble y triste historia de la cándida Eréndira y de su abuela desalmada(無垢なエレンディラと無情な祖母の残酷の物語)』。
彼自身が脚本も提供した作品である。

本作は、所謂「忍耐を重ね、最後にカタルシスを得る」型の作品である。
少女の成長物語に仮託された「隷属と解放」の物語であり、彼の地・コロンビアでのインディオの実情が汲まれているのであるが、前述の構成により我々鑑賞者もまた、忍耐とそこからの解放を追体験させられる。
即ち“現実に於けるコロンビアのインディオの人々”=“作中のエレンディラ”=“鑑賞している我々”であり、その隷属の時間の長短は有れど実体験型の作品であると言えようかとも思う。
この為構成自体もエレンディラの悲惨な生活・祖母の不気味さと酷薄さの描写が多く採られており、ラストは淡白なモノローグであるにも関わらず、より大きなカタルシスを得られる仕様となっている。

色彩豊かながらも静謐で、しっとりとした闇を孕んだ南米的マジックレアリズムの美しさは必見であるが、その鑑賞手段を含め、中々に障壁の高い名作である。
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