荒野の狼

欲望という名の電車の荒野の狼のレビュー・感想・評価

欲望という名の電車(1951年製作の映画)
5.0
ルイジアナ州のニューオリンズが舞台の1950年製作の白黒映画。映画の予告編は、公開時のものからリバイバルのものまで3編があるが、予告編を見ると映画の内容がほとんどラストまで描かれているので、こちらは本編を鑑賞後にみられることを勧める。
ブランドは、ほとんどの場面で肌にフィットしたTシャツを鍛えられた身体に着て登場しているが、この映画の公開後に、下着だったTシャツが普段着として使用されるようになったとのこと。
ビビアン・リーの悲劇的ヒロインに同情が集まる映画だが、ブランドの役柄も野獣性と一言では片付けられず、ブランドの側から映画を見るのも一つの見方。
ブランドは、年来の仲のいい友人と妻を持ち、カードやボーリングなどを楽しむ、教養はないが妻を愛し、友人思いの“普通”の男。そこに迷い込んだ義理の妹のリーによって家庭も友人関係も壊されそうになるのを、リーの過去の調査を重ねるなどして、必死に守ろうとした結果を、妻も友人も好意的にはとってくれずに、荒れていく人間関係に自分の心も荒れていく(映画の中でリーは自分の方が年下と言っているのでリーが妹で、ステラは姉のはずだが、多くの作品解説では逆になっている)。
リーには、ブランドの生活を壊そうとする意図はまったくないので、リーの視点でのみ見ると、リーに好意を持たないブランドはネガティブにしか見えないところにも悲劇はある。人気舞台の映画化だけに以下のようなセリフも珠玉。
“A cultivated woman - a woman of breeding and intelligence - can enrich a man’s life immeasurable. I have those things to offer, and time doesn’t take them away.”
“Physical beauty is passing - a transitory possession - but beauty of the mind, richness of the spirit, tenderness of the heart - I have all these things - aren’t taken away but grow!”
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